大型車や燃費の悪いスポーツ・ユーティリティ車(SUV)に乗る人が増えたせいで、CO2の削減ペースは鈍化していると、アナリストのヤン氏は指摘する。中国やインドといった新興国の中流層の間で、二輪車から自動車への乗り換えが起きていると指摘する専門家もいる。

トラクションモーターを巡る動きは、自動車部品業界の中でも活発化している。トヨタグループのデンソー<6902.T>とアイシン精機 <7259.T>は2019年、合弁会社ブルーイーネクサス社を設立。今年になってトヨタ自動車<7203.T>はこの合弁会社に10%出資した。

米部品メーカーのボルグワーナー は同業の英デルファイを買収し、日立オートモーティブはホンダ系のサプライヤー3社と経営統合することを決めた。

完成車メーカーでは独フォルクスワーゲンと米フォード・モーターが技術提携し、電気自動車分野で協業を進めている。トヨタ自動車も、他社との提携でトラクションモーターなど電気自動車の製造コストを引き下げようと動いている。

米ゼネラル・モーターズや日産などは、トラクションモーターにはコスト低減余地が大きく、自動車そのものを差別化するために重要だとして、独自のシステムを自社開発したいと考えている。

トラクションモーターをバッテリーやその他の部品とうまく結合することで、より静かでスムーズ、経済的な走りを実現できると考えていると、GMの電気推進担当エグゼクティブ・チーフ・エンジニアであるアダム・クヴィアトコウスキー氏はインタビューで語った。

「複雑な(e-Axle)の技術は知的財産(IP)の塊で、資本集約的、常に自社で設計し、生産したほうがいい」とクヴィアトコウスキー氏は語り、自社でトラクションモーターを手掛けず外部から調達する場合、技術の詳細や効率性を確認できないため、最適化されていない駆動装置を使い続ける恐れがあると付け加えた。

日本電産の提案に日産は難色

トラクションモーターのマーケットリーダーになるのに必要なのは、価格を低減することだと日本電産の永守会長は語る。それには生産を増やすことに加え、システムを構成するすべての部品と副次技術を生産できるようにすることが必要だという。

モーター専業の日本電産は、電子制御装置に精通した企業を探してきた。2014年に自動車用電子制御システムメーカーのホンダエレシスを、2019年にオムロンの車載事業を買収した。そしてトラクションモーターの技術を完成させるため、日産が株式の75%を保有する変速機メーカー、ジヤトコに買収の照準を定めている。

永守氏の考えを良く知る関係者によると、社用ジェット機をはじめ、非中核資産の売却を余儀なくされる日産の財務状態を考えれば、ジヤトコ買収の協議は進むと永守会長は踏んでいる。

ロイターは永守氏に取材を申し込んだものの、応じなかった。ジヤトコ買収に関心を寄せていることについて日本電産に書面で問い合わせたが、同社はコメントを控えた。

日本電産はこれまで、複数の日産幹部を引き抜いている。永守氏は昨年、日産の副最高執行責任者(副COO)に内定した直後に関潤氏を一本釣りした。2019年10月8日、専務だった内田誠氏が日産の最高経営責任者(CEO)に就任するというニュースが流れた翌朝、関氏はヘッドハンターから電話を受けたと、事情に詳しい関係者は明かす。永守氏は、関氏と直接話をしたいと考えていた。

それからほどなく、関氏は日本電産の本社がある京都へ向かった。永守氏と会い、申し出を断るつもりだったと、同関係者は語る。逆に永守氏は関氏に対し、自動車業界に押し寄せる電動化の波に乗り、2035年までに日本電産を10兆円企業に成長させるため、手を貸して欲しいと説得した。

コストを大きく下回る販売価格