南アフリカの英雄ネルソン・マンデラは、マリでもさまざまな場面に顔を出す。アパルトヘイト(人種隔離政策)時代には、自由を歌うポピュラー音楽に彼の名前がよく登場したものだ。だが私は、なぜマンデラが静かに忍耐を重ねて刑務所に居続けたのか、彼の神髄には目を向けず、ただレゲエに乗せたマンデラの歌を口ずさみ、「フリー、マンデラ!」と叫んでいた。

彼の闘いの本質に気付かせてくれたのは、『ネルソン・マンデラ 私自身との対話』だ。この本の前後に出合ったガンジーの本と併せて印象に残ったのは、相手を責めるのではなく自制することの大切さ。若者は「戦えばいい」という熱い心で動きがちだが、静かに抗議することが最も強いメッセージを発すると思うようになった。私自身、大学時代に小さな学生運動を経験した。何かを求める際は何かを破壊すればいいと考える学生が多く、自制することに意義を見いだす人はいなかった。


『ネルソン・マンデラ 私自身との対話』

 ネルソン・マンデラ[著]

 邦訳/明石書店

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私も、自立したい、自由になりたいと思うことは多かった。それを実現させるには知識を得て能力を高め、自分の選択肢を増やすべきだと信じていた。だが、果たしてそれで本当に自由になったか。気付いたのは、自分の意識の中にある自由の大切さで、その意識をどう持つか、持ち続けるかということだった。

(構成・前川祐補)

<2020年8月11日/18日号「人生を変えた55冊」特集より>

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