預金保険は取り付けを防ぐ効果的な方策である。皆の預金を保証してあげると、誰も心配になって預金引き出しに駆け込まなくなる。その結果、預金保険からお金を出すまでもなく、取り付けを防ぐことができる。人々の行動原理を読み解くことによって、2008年には最小コストで大恐慌を防ぐことができたのである。

マスク問題においてこの預金保険に相当するものは、政府によるマスクの大量確保と配給、そして供給不足の早期解消を国民にアピールしたことであろう。今回の政府の施策が預金保険同様に効果的だったとは言い難い。マスク2枚ですら供給がうまくできなかった上、政府がいくらマスクは足りると言っても、店頭に必要な分がない以上、その言葉を信じても意味がないことが理由だろう。

コロナ問題はまだ続く可能性がある。政府が効果的な対策を採ることができるか。その成否は為政者が人々の行動原理を読み解くことができるか否かに懸かっている。

<2020年6月2日号「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集より>

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人々の行動原理を理解しなければ、為政者の施策は社会を混乱に陥れる。例えば、大きな公園を閉鎖すれば人々は小さい公園に殺到する。これをもって人々の危機意識の希薄さを嘆くのは為政者としては正しくない。人々がそのように行動することを理解した上で、何が望ましいかを考えなくてはならないのだ。

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