<プロセスより結果、スピードが重視されるべき状況下にあって、ウイルスの封じ込め、検査、治療の3本柱の対応がもたついたのはなぜか。疫学者ではなく、経営者として提言するとすれば──。本誌「コロナ特効薬を探せ」特集より>

私がスポーツブランド、バーシティー・ブランズのCEOを務めていた頃、何度も繰り返していた言葉は「よりよく、より速く」だった。その言葉は社員にとって大きな意味があった。常に物事を改善するために努力すること、そして迅速に対応すべきことを思い出させたのだ。そのアプローチがあったからこそ、40年間の成功があった。

20200526issue_cover200.jpg

新型コロナウイルスが国家と人々の健康と経済に与えたダメージに関して解決すべき問題は2つある。まず人々が健康であること。次に、病気になる心配がない状態になること。そうなるまで景気刺激対策は何もできない。経済において供給には相方、つまり需要が必要だ。健康でい続けられるという現実と、その実感の両方があることで、初めて需要が生まれる。

では、 封じ込め、検査、治療の3本柱に関して、よりよく、より速く対応するのを妨害したのは何だったのだろうか。

4月3日、米食品医薬品局(FDA)は医療従事者に対して、既に承認されているN95マスクの代用品になるとして、ウイルスの侵入と拡散を防ぐKN95マスクの使用をようやく承認した。KN95マスクは中国製だが、米国立労働安全衛生研究所が認定したN95マスクと同じ性能基準(新型コロナウイルスを含む0.3ミクロン以上の粒子を95%以上フィルタリングする)を満たしている。

また同日、米疾病対策センター(CDC)は感染拡大を防ぐために公共の場ではマスクや布で顔を覆うよう推奨した。医療従事者用にN95マスクを確保するため、一般人にはN95は勧めないとしている。

ここで2つの疑問が浮かぶ。まず、なぜ政府が常識的な勧告を出すのにそれほど時間を要したのか。そして、なぜアメリカ国民は政府に常識的な勧告を出させる必要があったのか。

平時なら取らないリスクを取る

1つ目の疑問に関して思うのは、専門家はマスク着用が100%効果的ではないことを知っているからこそ、市民には「確実ではないが念のためマスクをする」という発想ができるほどの「知恵はない」と考えていたのではないかということだ。

私たちは「平常時」に、医療関係者がN95ではなく普通のマスクを着用していることを知っている。マスクに意味がないのなら最初から着ける必要などない。使うのは、何もしないよりは明らかにましだからだ。

先回りしてウイルスと戦う