研究を率いたディーキン大学のベライネ・ミテクによると、こうした食生活は、腸内細菌叢の乱れや酸化ストレス、慢性炎症など、複数の経路を通じてメンタルヘルスに影響する可能性がある。精製炭水化物やトランス脂肪酸、添加物を多く含む食事によって炎症を促す物質が増え、脳内の神経伝達物質の働きなどに影響する可能性もあるという。
マサチューセッツ総合病院のウマ・ナイドゥー医師は、遺伝的要因にかかわらず食事とうつ症状の関連が認められた点を「臨床的に最も興味深い」と評価する。うつ病の家族歴がある人に対しても、食生活を改善する意義がある可能性を示すためだ。
ただし、今回確認された効果は「確かにあるものの、劇的なものではない」とナイドゥーは強調する。「一晩で劇的な変化を感じることはないだろう。しかし、よい食習慣の効果は時間とともに積み重なり、心臓や脳、全身の健康にもプラスになる」
また、今回の研究は欧州系のオーストラリア人を対象としているため、より多様な集団でも同様の結果が得られるかを検証する必要がある。
高齢者では、加齢に伴う身体的な病気や服薬に加え、死別や退職、人との交流の減少といった生活の変化がメンタルヘルスに影響することもある。カーネルは、うつ病がパーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患と関連し、場合によってはそうした疾患に先立って現れることもあると指摘する。
ミテクは今回の結果について、健康的な食生活が高齢期のうつ病予防に役立ち、標準的な治療を補完する選択肢になり得るとしている。
具体的には、野菜や果物、全粒穀物、魚、豆類、ナッツ類を積極的に取り入れ、油はオリーブオイルをメインに使いながら、超加工食品を減らす食生活が推奨される。
ただし、食事はあくまで予防やリスク低減を助けるものであり、専門的な治療の代わりになるわけではない。気分の落ち込みや興味・関心の喪失、睡眠障害、慢性的な倦怠感などが続く場合は、速やかに医療機関を受診することが大切だ。
Reference
Mengist, B., Davoodian, N., Lotfaliany, M. et al. (2026) Diet quality and depressive symptoms in older adults, assessing the effect modification by genetic predisposition and low-grade inflammation: a target trial emulation. Molecular Psychiatry. https://doi.org/10.1038/s41380-026-03762-6