Kentaro Okasaka

[東京 26日 ロイター] - 9月ごろから急増した企業などへのサイバー攻撃は収まる気配がなく、GMOインターネットグループが政府に「能動的サイバー防御」の発動を要請する事態に発展した。不正アクセスによる情報流出が相次ぐ中、顧客に一律の補償金を支払う企業も出ており、政府は26日夕、サイバーセキュリティーに関する関係閣僚会議を開いた。来週中にも緊急対策パッケージをまとめる方針で、専門家からは能動的サイバー防御の運用指針を示すなどして政府が抑止力を発揮すべきだとの声が上がっている。

「個別のサイバー攻撃事案については、政府の対応状況を攻撃者に知らせることにもつながるため、コメントは差し控える」。GMOの要請への対応を問われた木原稔官房長官は26日午前の記者会見でこう述べた。その上で、企業から要請があるかどうかにかかわらず、「法律の要件に照らして適切に判断される」と説明した。

自社のFX(外国為替証拠金取引)自動売買サービスがサイバー攻撃を受けたGMOインターネットGには、一部ユーザーから身に覚えのない取引が行われたとの報告が寄せられている。攻撃者とみられる相手から金銭を要求されているほか、応じなければ自社や顧客の情報を公開するとの連絡も受けているという。同社株は26日、取引開始直後から売り込まれ、前営業日比15%安で引けた。

岩井コスモ証券投資調査部の有沢正一フェローはGMOの要請について、「これは政府に助けを求める企業側の『悲鳴』だ」と指摘する。「個別事案には対処できないと言うだけで終わるのか。政府の対応が注目される」と話した。同証券も売買管理システムがサイバ‌ー攻撃を受け、顧客の意図しない売買注文の発注が確認されるなどの被害を受けた。

今月1日に施行されたサイバー対処能力強化法と関連整備法により、サイバー攻撃による重大な被害を防止するため、警察や自衛隊が攻撃者のサーバーなどに対して無害化措置を講じる「能動的サイバー防御」が可能になった。有沢氏は「運用方針が明確に示され、広く認知されれば、それ自体が抑止力となる可能性がある」とみる。

高市早苗首相は26日夕に開いた関係閣僚会議で、来週中をめどに政府の緊急対策パッケージをまとめる考えを表明した。システムの脆弱性を発見する模擬的な攻撃テストを行うことや、サプライチェーン(供給網)全体でサイバー攻撃の観測網を整備し、中小企業を含めた迅速な対策につなげる取り組みを前倒しで実施することなどを指示した。

<攻撃は業種選ばず、マクロ経済全体の損失も>

トレンドAIのデータによると、日本に拠点を置く組織で発生したサイバーセキュリティー事案は今年、10月20日時点で723件と、昨年通年の594件をすでに上回った。10月だけで111件に達したという。有沢氏は「直接資金を狙うなら金融機関が主な標的となるが、ランサムウェアの場合は業種を選ばない」と話した。

第一ライフ資産運用経済研究所の前田和馬・経済調査部主席エコノミストは、サイバー攻撃の影響が単一企業にとどまる場合は競合他社による代替などでマクロ経済への影響は限定的としながらも、交通インフラのように代替が難しい事業者や産業全体に被害が広がった場合には、「マクロ経済全体の損失に波及する可能性がある」と指摘する。

広く利用されているプログラミング言語「PHP」で重大な脆弱性が見つかった問題では、日本企業が相次いでウェブサイトの機能を停止した。外食業界ではテイクアウト注文の受け付けを見合わせる動きが広がり、一時的ながら経済活動に一定の影響が出た。

一方、前田氏はサイバーセキュリティー対策強化に伴うIT関連支出の増加は、国内総生産(GDP)を押し上げる可能性が高いとみる。2000年問題への対応では、全世界のIT対策費用が3000億━6000億ドル(約47兆─94兆円)に達し、1999年の世界GDPの0.9─1.8%に相当したとされる。

サイバーセキュリティー関連企業への関心も高まっている。トレンドマイクロ株は8月中旬の5300円台から足元では7600円台まで上昇した。今週から決算発表が本格化する中、各社経営陣によるサイバーセキュリティー対策や業績への影響に関する発言にも注目が集まりそうだ。

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