Gabriel Araujo Marcela Ayres

[サンパウロ/ブラジリア 8日 ロイター] - 接戦となっているブラジル大統領選を巡り、保守派のフラビオ・ボルソナロ上院議員が勝った場合には気候変動対策に関連した気候金融の政策が反故にされるのではないかとの懸念が高まっている。

ボルソナロ氏は先週末の第1回投票で首位に立ち、予想を上回る健闘ぶりを見せた。ボルソナロ氏は温室効果ガス排出の規制強化を公約に掲げたものの、森林伐採を急増させた父のジャイル・ボルソナロ前大統領の問題については批判しなかった。

25日の決選投票では、左派のルラ大統領と対決することになる。2兆6000億ドル規模の国内総生産(GDP)を抱えるブラジルのルラ政権は気候変動対策を加速させ、気候金融の政策で世界の主要国に浮上した。産業界はこうした政策を撤回すれば多大なコストが生じる可能性があるとして、ボルソナロ氏に対して放棄しないよう強く求めている。

ブラジル経済社会開発銀行(BNDES)の社会環境担当ディレクター、テレザ・カンペロ氏は「この政策を後退させるのは経済的な愚行だ」と訴える。

ボルソナロ氏は8月の放送局TVグローボのインタビューで、異常気象は周期的な現象だと主張し、人間の行動に直接起因しているとは考えていないと強調した。最近は気候変動対策の最善の方法は、基本的な衛生設備への投資だと言い張った。

気候変動対策団体オブセルバトリオ・ド・クリマは、ボルソナロ氏の計画が温室効果ガスの排出削減目標をほぼ無視しているとして「森林伐採の防止や環境法執行の強化といった提案は、上院議員として取り組んできたことと著しく矛盾している」と問題視した。

ボルソナロ氏の陣営の広報担当者は、同氏が勝利した場合には環境政策を政権移行期間中にさらに具体化するとコメントした。一方ボルソナロ氏がルラ氏の気候金融の政策を維持するかどうかについてはコメントを差し控えた。

<経済効果>

2019年から22年にかけてのジャイル・ボルソナロ前政権は環境保護の取り組みを後退させ、森林伐採が拡大した。その反省からルラ政権はBNDESからの融資や投資を活用し、脱炭素化の産業を後押ししてきた。ルラ氏は24年以降に総額1900億レアル(約378億3000万ドル)を投じてきた気候金融の取り組みを強化すると公約している。

専門家らは、こうした気候変動対策アジェンダがもたらす経済効果は無視しがたいと指摘している。

脱炭素化のスタートアップ企業、モンバックのガブリエル・シルバ最高経営責任者(CEO)は「気候変動対策アジェンダや、この産業を国の戦略的産業と位置付けた政府の視点は、特定の政党に依存するものではない」と強調。大統領選の結果がどうなろうとも、ブラジルの脱炭素化市場が発展しつつあることや、BNDESが提供する炭素クレジットの選択肢もあることなどから、政策が続けられることが期待できると語った。

ブラジルの炭素クレジットは、自主的に排出削減目標を設定した企業間で取引されている。24年に成立した法律に基づき、企業が公式の脱炭素化目標を達成するために炭素クレジットを購入できる炭素市場の立ち上げを準備しており、これによってブラジルは国際的な炭素クレジットの取引も可能になる見込みだ。

国営石油会社ペトロブラスや鉱山大手ヴァーレなどが加盟する「ブラジル持続可能な開発ビジネス評議会」(CEBDS)は、大統領選の第1回投票の前に候補者らに対し、規制された炭素市場がブラジル経済にとって重要課題になるとみなしていると伝えた。

CEBDSの企業管理担当エグゼクティブディレクター、ダニエラ・ミニャーニ氏は「25年には、世界全体でクリーンエネルギー技術に2兆2000億ドル程度が投資された。その資本は流動的だ」とし、不確実性が生じた場合には投資家が他へ資金を移す可能性があると指摘した。

BNDESのカンペロ氏は、認証済み木材や、再植林地域で栽培されたカカオ豆やコーヒー豆といったバイオエコノミー製品の需要が高まっていることを踏まえると、ルラ氏が進めてきた気候変動対策の方針を覆すことは困難になる可能性があるとの見方を示す。

BNDESの森林プログラムは、地域の森林の回復と保護を目的としたプロジェクトに対して総額150億レアル規模の融資と投資を手がけてきた。

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