日本で開催された2026年アジア競技大会は10月4日、2週間にわたる熱戦に幕を下ろした。45の国・地域から選手が参加し、43競技で争われた大会だったが、公式スローガンに「Imagine One Asia(ここで、ひとつに)」を掲げながらも、競技が進むにつれて、分断されたアジアの政治情勢が色濃く映し出されることになった。

大会の正式開幕を数日後に控えた時期には、開催都市・名古屋で行われた選手歓迎式典に、戦国武将の豊臣秀吉に扮した俳優が登場したことで、日本と韓国の間に緊張が走った。豊臣秀吉は名古屋ゆかりの武将として地元では親しまれている一方、16世紀に朝鮮半島への侵略(朝鮮出兵)を指揮した人物でもある。

東京2020夏季オリンピックでは、韓国選手団が選手村に掲げた横断幕について、撤去を求められたことがある。そこには、同じ戦争で日本の水軍を破った朝鮮の李舜臣(イ・スンシン)将軍の言葉とされる文言が記されていた。こうした経緯もあり、名古屋での一件に韓国側は強く反発し、大会組織委員会に抗議した。

歴史問題は、韓国と日本の関係において特に敏感な問題だ。秀吉の朝鮮出兵から約300年後の1910年には日本による朝鮮半島の植民地支配が始まり、1945年まで続いた。

今回のアジア大会ではもう一つ、北朝鮮が日本で開催されるスポーツ大会に40年以上ぶりに選手を派遣したことでも注目を集めた。その参加自体が異例だった。日本と北朝鮮の間には正式な国交がなく、日本が北朝鮮に科している制裁措置により、北朝鮮国民の日本への入国は通常、認められていない。

日本には、植民地支配の時代に日本へ渡った朝鮮半島出身者やその子孫からなる大規模な在日朝鮮人コミュニティーが存在する。その一部は、めったに日本を訪れることのない北朝鮮選手団を応援し、競技会場では「共和国の威容を示そう」といった愛国的なスローガンを記したプラカードを掲げた。

女子サッカーでバングラデシュに10対0で勝利した後の記者会見では、北朝鮮代表の朴成鎮(パク・ソンジン)監督がこうした応援への感謝を表明した。会場からの声援について、「選手たちと私自身に大きな力と励ましを与えてくれた」と語った。試合後、チームはスタジアムでファンとともに勝利を祝った。

北朝鮮当局は、国際大会で選手が外国人とどのように接触するかを厳しく管理している。このため、大会期間中、北朝鮮選手団が交流した相手は、主として在日朝鮮人コミュニティーの人々だった。北朝鮮指導部がとりわけ警戒しているのが、海外遠征中の選手による亡命だ。

しかし、情報機関員による24時間態勢の監視など厳しい制限が敷かれていたにもかかわらず、韓国メディアによると、北朝鮮当局は選手団のメンバー2人による日本での亡命申請を防げなかったという。

北朝鮮当局は、国際大会に出場する自国選手を厳重に監視している。

今回のアジア大会で見られた摩擦のうち、ある意味で予想通りだったのが韓国と北朝鮮の対立だ。大会序盤には、男子ホッケーの韓国代表に対し、誤って北朝鮮の国歌が流される事態も起きた。

単純な運営上のミスだった可能性が高いものの、韓国当局は厳しく批判した。韓国オリンピック委員会は声明で、このような事態は国際スポーツ大会で「決して起きてはならない」と表明した。

その後、女子サッカーのグループステージで韓国と北朝鮮が対戦し、試合は1対1の引き分けに終わった。試合後、両チームの監督は握手を交わさなかった。ぎくしゃくした雰囲気は試合後の記者会見でも続き、朴監督は韓国メディアからの質問に答えなかった。

北朝鮮射撃代表の金賢淑(キム・ヒョンスク)は、多くの韓国メディアの記者が出席する予定だった記者会見に姿を見せなかった。また、重量挙げで金メダルを獲得した北朝鮮の李聖琴(リ・ソングム)は、朝鮮民主主義人民共和国を意味する「DPR Korea」を使わなかったソウルの記者からの質問に回答することを拒んだ。

北朝鮮の選手や監督、スポーツ関係者は以前から、国際大会では北朝鮮を主権国家として扱うこの名称を使うよう強く求めてきた。一方、韓国は北朝鮮を正式には主権国家として認めていない。

外交的に孤立した台湾

台湾選手団も政治的な問題に直面した。大会開幕前、台湾チームのトレーニングキャンプに掲げられていた「国家運動訓練センター」と書かれた横断幕が何者かによって破損された。

台湾の主権については国際的に立場が分かれているため、国際スポーツ大会には「チャイニーズ・タイペイ」の名称で参加している。中国は台湾を自国の一省と位置づけている。この横断幕は台湾を独立した「国家」として表現するものと受け止められ、大会に関わる一部の人々の反発を招いた可能性がある。

台湾のスポーツ相、李洋(リー・ヤン)が、選手村で行われた歓迎式典への出席を一時認められない事態も起きた。大会主催者側は、李の出席が政治的な論争を引き起こすことを懸念した。これに抗議して台湾の選手たちは会場から退出。その後、李の選手村への入場が認められ、式典は再開された。

大会スタッフはさらに、台湾のファンが「Taiwan」と書かれた衣服を着用することを、政治的なメッセージに当たるとして禁止した。観客席には、台湾の旗を振ることを禁じる掲示も出された。台湾のファンは規制に抗議するかのように、大会中「Team Taiwan」と声を上げた。

2026年アジア大会で表面化した地域間の亀裂は、この大会だけの問題ではない。世界の分断が深まるなか、国際スポーツ大会はしばしば政治的対立の舞台となっている。

The Conversation

Jung Woo Lee, Senior Lecturer in Sport and Leisure Policy, University of Edinburgh

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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