世界のモノの流れをすべて握られ、通商上の強力な兵器になりかねないと米国が危惧した中国の物流情報プラットフォーム「LOGINK(ロジンク)」の世界戦略が失速している。中国政府の重点事業だったものの、国際的な港湾関連団体から離脱し、日本や韓国とのデータ共有も停滞。中国国内では未払いなどを巡る訴訟が相次いでいる。
ロイターが海運業界関係者や当局者20人以上に取材し、訴訟記録などを調べたところ、海外で進めていた主要な連携は相次いで停滞している。LOGINKの運営会社はロイターの電話やメールでの取材に応じず、中国交通運輸省も質問への回答を控えた。一方、同省は6月の政策文書で、LOGINKをより多くの国内データと接続するよう求めていた。
ロイターの記者が9月、中国浙江省温州市にあるLOGINKの拠点を訪れると、オフィスは事実上無人で、照明は消え、コンピューターのケーブルも撤去されていた。
LOGINKは、税関や港湾、運送事業者などの物流データをデジタル上で共有する仕組み。中国政府が海外展開を進めてきた。約20年前、浙江省の地方政府が物流効率化を目的に始め、その後、交通運輸省の管轄に移った。2010年には中国、日本、韓国の3カ国政府が貨物データの共有で合意し、日韓の物流情報システムと接続。欧州の港湾との連携も模索した。
しかし、2022年ごろから米国の政府や議会が警戒を強めた。米国の当局者や安全保障の専門家は、取引される物品や数量、価格などの非公開情報を中国政府が収集し、中国企業が競争上の優位を得るために利用する可能性や、軍関連物資の追跡に使われる恐れがあると指摘した。
米議会は国防総省がLOGINKと関係する組織と契約することを禁じ、同盟国などにも利用しないよう働きかけることを米当局に求めた。
LOGINK側はこうした懸念を否定している。24年に米通商代表部(USTR)への提出文書で、機密性の高い商業情報を収集したり、世界の貨物の動きを継続的に監視したりする能力はないと説明した。
中国国務院が「重点プロジェクト」と位置付けたLOGINKが活動を縮小し、財務・法務上の問題を抱えるようになった理由は特定できていない。ただ、海外展開が後退した時期は、米国が同盟国や国際組織などへの働きかけを強めた時期と重なっている。
米国務省の報道官は、LOGINKの利用を抑えるための具体的な外交活動について説明を避けたが、「米政府や重要な港湾インフラでは利用を禁止している。同盟国や業界にも、この脅威を同様に深刻に受け止めるよう求めている」とした。
その後、LOGINKの海外での活動は後退した。港湾関連のデジタル事業者でつくる国際港湾コミュニティシステム協会(IPCSA)からは、会費の支払いが止まったため24年に離脱。同協会とのデータ共有事業も停止している。
日本、韓国との連携も行き詰まった。韓国海洋水産省によると、中国側は24年3月に予定していた3カ国の会合を「国内事情」を理由に中止し、その後は開催されていない。
日本からLOGINKへのアクセスも事前の通知なく途絶えた。国土交通省の担当者はロイターに、日本側がアクセスできなくなってから1年以上が経過し、中国側の担当者とも連絡が取れないと明らかにした。
中国国内では法的問題も相次いでいる。
企業情報データベース「企査査(Qichacha)」によると、運営会社は24年1月以降、少なくとも39件、総額約130万ドルの訴訟を起こされている。労働争議や公共料金などの未払いを巡るとみられる訴訟が含まれる。
中国移動(チャイナ・モバイル)の現地子会社も昨年10月、サービス提供契約を巡って提訴し、裁判所はLOGINK側に支払いを命じた。5月には入居する工業団地の国有系デベロッパーが不動産賃貸借を巡って提訴した。
ロイターはチャイナ・モバイルと国有系デベロッパーそれぞれにコメントを求めたが、いずれからも回答を得られなかった。
(取材協力:Tim Kelly、Joyce Lee、Michael Martina 編集:Katerina Ang 日本語記事編集:久保信博)

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