Joe Cash Trevor Hunnicutt David Brunnstrom
[北京/ワシントン 21日 ロイター] - 世界の2大超大国の首脳が24日、ワシントンで会談する。5月に北京で行われた前回の会談以降、習近平国家主席が中国と世界の貿易拡大を主導する一方、トランプ米大統領は対イラン戦争の長期化、それに起因するインフレなどで支持率低下に苦しんでいる。
両首脳を取り巻く環境も踏まえ、今回の会談への期待は抑制されたものになっている。トランプ氏は、支持率と米国民の家計に打撃を与えているイランとの高コストな戦争に制約されており、習氏は譲歩を急いでいないとアナリストは指摘する。
こうした中、会談で焦点の一つとなるのは、世界経済への大打撃を回避した2025年の貿易休戦を延長する意思を両首脳が示すかどうかだ。
ブルッキングス研究所の外交政策専門家で、米国家安全保障会議(NSC)の中国部長を務めたジョン・チン氏は「習氏は目に見える成果を特に求めていない。中国が自らを強化する時間を得るため、トランプ氏との紳士協定を延長したいのだ」と述べた。
ベセント米財務長官と中国の何立峰副首相は20日、首脳会談に向け、ニューヨークで閣僚級協議を行った。米側は、人工知能(AI)の安全性に関する新たな通知メカニズムを提案。ベセント氏は「あらゆる国境を越えた活動と同様に、世界第1位と第2位のAI大国間の関係において、不透明な状態からより透明性の高い状態へと移行することは極めて重要だと考えている」と述べた。
<圧力効かず、「中国ショック2.0」に>
昨年10月の貿易休戦合意以降、トランプ氏の関心は、イランとウクライナでの戦争から言論の自由を巡る欧州との対立まで、数多くの外交問題に分散している。
中国も内需の鈍化や長引く不動産不況といった課題に直面している。ただ、トランプ氏が抑え込もうとした輸出の勢いは衰えておらず、エコノミストの間では「中国ショック2.0」と呼ばれる現象が広がっている。
中国の世界貿易黒字は、2年連続で1兆ドルを超える勢いだ。SheinやTemuなどのオンライン小売業者が依存する低価格小包を米国が規制する取り組みは成果を上げているが、中国が今年これまでに米国へ販売した約6500の商品分類の半数超は昨年を上回っている。
習氏には財界の代表団が同行する。米規制当局の監視対象となっている企業も含まれる可能性がある。
ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の米中経済関係専門家、スコット・ケネディ氏は「トランプ政権は大規模な一方的圧力で中国に譲歩を迫れると考えていたが、そうはならなかった」と指摘し「今やこれは習近平氏の世界であり、われわれは皆、その世界で生きている」と語った。
<米中間選挙に向けたカード>
アナリストの見方通り習氏が主導権を握っているとすれば、習氏は米国の台湾支援を弱めようとするとみられ、アジアの米同盟国の不安は一段と強まる。
トランプ氏によると、習氏は5月の会談で、台湾への武器売却や米国の防衛意思を含め、台湾について繰り返し質問した。
トランプ氏は、140億ドル規模の台湾向け武器売却計画を、中国との「交渉材料」と表現した。
台湾と日本の当局者の間では、11月の米中間選挙を前に政治的成果が欲しいトランプ氏がこの材料を取引に使おうとするのではないかとの懸念が出ている。
中国によるボーイング機や米国産農産物の購入、あるいは米国のオピオイド危機を悪化させてきたフェンタニル前駆体化学物質の流入抑制に向けた確約などが取引に含まれる可能性がある。
「米中関係はより取引的になっている」と中国外務省に助言する上海・復旦大学の呉心伯教授は述べる。米国は貿易協議を優先したいかもしれないが、中国にとっては米国の台湾対応が鍵になり得ると指摘した。
<イランへの圧力「お願い」>
米側は、トランプ氏の支持率を最低水準に押し下げたイランとの戦争終結に向け、習氏にはイランに圧力をかけられる特別な能力があるとみている。
しかし習氏はその意向をほとんど示していない。
ベセント氏が「経済的なDデー」と呼んだ、イランと取引する国々に対する米国の2次制裁の脅しも、先月以降、イラン最大の貿易相手国に対してはまだ行使されていないようだ。これはトランプ氏が他の問題に集中せざるを得ない中で、習氏との関係安定を強く望んでいる証拠の1つだとアナリストは指摘する。これは習氏にとって好都合だ。
トニー・ブレア地球変動研究所のシニア地政学リサーチャー、ルビー・オスマン氏は「習氏とトランプ氏の双方は、より差し迫った課題に集中するため、関係の安定が非常に役立つと感じている」と述べた。
「トランプ氏にとってはイランだ。習氏にとっては、トランプ氏の後に何が起きても対応できるよう、中国国内の強靱(きょうじん)性を構築することだ」と語った。