Eduardo Baptista

[北京 7日 ロイター] - 中国で8月に開催された「世‌界ヒューマノイドロボット競技大会」では、人型ロボット(ヒューマノイド)がジャンプ競技やボクシング、ダンスを披露し、一部のロボットは100メートル走でウサイン・ボルト氏が持つ世界記録を上回る走りを見せた。性能の高いロボットには歓声が上がり、よろけて転倒する様子もネット上で話題となった。

一方、大会終了から2日後、中国人民解放軍(PLA)の機関紙「解放軍報」は研究者らに対し、こうした最先端技術を「戦闘員ロボット」のため、研究室から軍事訓練の現場へ移すように呼びかけた。

ロイターが中国軍による100件超の調達公告、学術論文、特許、政府系出版物、政府記録、防衛関連企業の資料を調査したところ、中国の防衛当局・軍事研究機関が人型ロボットの軍事利用に関する研究を加速させ、将来的な戦時投入を見据えていることが分かった。

未公表の資料によると、中国の軍事機関は戦場での運用を想定した要件に照らして人型ロボットの試験を実施し、ロボットとその訓練に必要な技術の調達を進めているほか、兵士と一緒に活動させる方法を研究している。こうした取り組みは2025ー26年にかけて加速し、ロボットの認識能力や物体を操作する能力、訓練用データに重点が置かれている。

BofAグローバル・リサーチによると、25年の世界の人型ロボット出荷台数の約95%を中国メーカーが占めた。商業面の圧倒的な優位性により、PLAは拡大を続ける産業基盤を活用しつつ、軍事用途の開発を進めることが可能になっている。

中国でのロボット軍事研究は、世界で軍事技術の進化がいかに急速に進んでいるかを浮き彫りにしている。ロシアとウクライナの戦争では、航行や標的識別に人工知能(AI)を使う半自律型ドローンが偵察・攻撃の様相を一変させた。ロボットは補給物資の輸送や死傷者の収容・搬送にも使われている。ロイターはこれまでにも、中国軍が第二次世界大戦以降で欧州最悪の紛争であるウクライナ戦から知見を得ようとしていると報じてきた。

こうした技術革新を背景に、世界各国の軍で自律型システムへの関心が高まっている。

米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)で機械・航空宇宙工学を教えるデニス・ホン教授は「そもそもロボットを開発する最大の理由の一つは、人間を行かせたくない場所にロボットを送り込むことだ。ロボットを失う代わりに人命の損失を避けられるのであれば、ロボットは消耗品になり得る」と訴えた。

中国国防省と、PLAの主要研究機関である国防科技大学(NUDT)は、人型ロボットの軍事利用についてロイターからの取材に応じなかった。

ロイターは、中国が武装した人型ロボットをPLAの実任務部隊に配備したことを示す証拠を確認できなかった。ロボットは依然として電力消費が大きく、管理された実演環境以外では信頼性に欠ける。カーネギーメロン大のアーロン・ジョンソン教授(機械工学)は、戦場にはさまざまな変動要因があり、予測不能な状況への対応能力がロボットにとって大きな課題となると指摘する。

<都市攻撃部隊>

中国は既に、都市戦におけるヒューマノイドの活用について構想を描いている。

人型ロボット、ロボット犬、無人車両の6体の「戦闘ロボット」を2つの攻撃チームに分けて地上部隊と連携させ、それぞれ敵に占拠された建物を階ごと、部屋ごとに制圧する──。これは、西安市にあるNUDTの試験センターの研究者らが2025年8月に発表した論文で示されたシナリオだ。この研究では5ー10年以内に利用可能になると予測されている装備を使い、都市攻撃部隊を想定している。ただし、ロボットの交戦規定や搭載する兵器、民間人と遭遇した場合の対応については明記されていない。

台湾「国防安全研究院」の研究者、周若敏氏は、バランス感覚や認識能力、持久力が向上すれば、人型ロボットは建物やトンネル、艦船内部などで役立つ可能性があると指摘。「理論上は、2本の手と2本の足を組み合わせることで、移動やよじ登る動作、物体操作の能力を兼ね備えることができる」と語った。

一方、より単純な偵察や兵站(へいたん)任務では、四足歩行型や無限軌道型、車輪型のロボットの方が一般的に安価で、大規模に配備しやすいという。

中国軍の論考では、人型ロボットの任務が幅広く拡大していくとの見通しが示されている。25年7月の解放軍報の記事は、人型ロボットの任務が最終的には「戦闘支援から主たる戦闘任務へ」と発展する可能性があると論じた。また、人間が標的を確認した場合に、ロボットが生身の標的に発砲することをどのように認めるかについても論じている。

12月には、PLA東部戦区がAIで生成した映像を公開。映像には、人型ロボットや四足歩行型を含む軍用ロボットが、将来の紛争を想定したシナリオで、台湾の防衛網を圧倒する様子が描かれていた。

ヒューマノイドの戦場利用を模索しているのは中国だけではない。米陸軍は昨年、「軍事用ヒューマノイド能力」の開発を目指すコンペティションを開始。将来的には兵士と連携して活動することが想定されている。米陸軍によると、想定される任務には偵察、警備、障害物の除去、危険物を扱う作業、都市部での攻撃・防御任務などが含まれる。最終候補には最大10チームが選ばれ、今年、米軍の専門家とともにシステムを試験する予定で、後続契約には最大125万ドル(約2億円)が充てられる可能性がある。

ただ、二足歩行型・四足歩行型ロボットの開発では、米国のロボット産業は中国に大きく後れを取っている。ロイターが先月報じたところによると、世界有数の人型・四足歩行ロボットメーカーである中国の宇樹科技(ユニツリー)は、主力製品であるロボット犬の設計に、米軍の資金で開発された技術を取り入れていた。

米国防総省と米陸軍は、この報道についてコメントしなかった。

<敵陣への潜入>

中国が人型ロボットの軍事利用に本格的な関心を示し始めたのは2024年だった。

NUDTのウェブサイトによるとこの年、NUDTと中国人民解放軍軍事科学院は防衛技術フォーラムを共催し、ヒューマノイドシステムの軍事利用をテーマとするセッションも行われた。両機関はロイターの質問に回答していない。

翌25年、NUDTは人型ロボットを戦場で使うための装備として明確に位置付けた。同大学が6月に開催した競技会では、ロボットが指定区域内に入り、地図を作成し、標的を特定する、「敵陣後方への潜入」を想定した競技が行われた。別の種目では、ロボットが軍事基地で身元確認や規律検査、警備巡回を行うことも想定されたという。

NUDTはこの競技会を、人型ロボットを最終的に「戦場へ送り込む」ための実証の場の一つと位置付けた。

当時の調達の記録からも、こうした最終目標が読み取れる。

25年5月、PLAは設置と技術訓練を含む人型ロボット1体の購入について調達入札を実施した。その4カ月後には、NUDTの電子メールアドレスを連絡先として記載した調達公告が出され、「身体性を備えた人型ロボットの知能認識・精密操作システム」が応募の対象となった。

ただ、これらの記録には具体的な情報がほとんどなかった。ロイターは、これらの入札が実際に成立したのか、成立していた場合、どの企業が落札し、どの機種のロボットが納入されたのかを確認できなかった。

6月には、PLAが約30万ドルを予算化し、人型ロボット向けにカメラ、レーダー、動作データを収集・ラベル付けするシステムを調達しようとしていたことが、別の軍調達文書で明らかになった。データには、ロボットが通行可能な地形に関する情報も含まれる。

仕様からは、中国軍の関心がロボット本体だけでなく、認識、物体操作、訓練システムにまで広がっていることが分かる。防衛研究者らによるとこれらは、人型ロボットを管理された実演環境から実際の運用へと移行させるうえで不可欠な技術だ。

<遠隔操作>

2026年には、ヒューマノイドの開発は軍事研究機関の枠を超え、中国の防衛産業にも広がった。

その一例が、中国国営防衛大手の中国北方工業(ノリンコ)が製造している軍事・特殊用途向け人型ロボット「伏羲(フーシー)」だ。8月に公表された同社の資料によると、このロボットは等身大で、歩哨(ほしょう)任務、全天候型偵察、自律巡回、危険な任務への対応が可能だという。

同社によると、フーシーはノリンコの遠隔操作システムとの連携が可能で、人間のオペレーターが遠隔から操作できる。ロボットが全ての判断を自律的に下す必要がなくなることで、多くのロボット専門家が人型ロボット開発における最大の課題と指摘する問題に対処できる可能性がある。

ノリンコはコメントの要請に回答しなかった。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の上級アナリスト、マルコム・デービス氏は、現時点では人型ロボットを実戦で運用するのは現実的ではないと指摘しつつ、「しかし5ー10年後には十分に実用化されている可能性がある」と話した。

たとえ現在は遠隔操作されているとしても、自律運用を想定して設計されたヒューマノイドシステムは、最終的には倫理的なジレンマに直面する。戦時国際法は、戦闘員と民間人を区別し、負傷者や降伏した兵士を攻撃しないよう軍に求めている。

赤十字国際委員会(ICRC)は自律型兵器について、降伏の意思表示を確実に判断することが難しい可能性があると警告している。こうした判断は状況や行動、意図に左右され得るからだ。

米軍は自律型兵器について、法的審査と実戦的な試験を義務付けるとともに、武力行使については指揮官と運用担当者が適切な判断を下す必要があるとしている。中国国防省も3月、AI搭載兵器は人間の管理下に置くべきだとの見解を示した。

こうした懸念にもかかわらず、中国は人型ロボットの軍事利用の模索を続けている。

軍事科学院の王永華研究員は11月の論考で、人型ロボットには運動能力、認識能力、知能の面でなお解決されていない問題があるとの見方を示した。軍事システムとして広く普及するには技術的な突破口に加え、製造コストの低下と産業規模での量産が必要になると指摘した上で、こうした条件が整えば、「人型ロボットは戦場に続々と投入されることになる」と論じた。

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