Sriparna Roy

[28日 ロイター] - 米国では肥満症治療薬(減量薬)でスリムになる男性が増加しているが、彼らの関心はさらに広がりを見せている。たるんだ皮膚や薄毛の治療、審美歯科などの美容医療を取り入れ、肉体改造を「完成」させようとする動きが活発化しているという。患者や美容外科医らが明かした。

ニュージャージー州ホーボーケンでIT関連の仕事をしているマーク・Cさん(57)は減量薬を5年間服用してきた。最初はデンマークの製薬大手ノボノルディスクの「ウゴービ」、続いてイーライリリーの「ゼップバウンド」を使い、23キロの減量に成功。だが体重が落ちるにつれて、顔の肉付きまで落ちていった。

「鏡に映った自分を見て、すごくいい気分だった。体が引き締まり、本来の自分に戻れた気がした。だが鏡を見ると、頬がこけていることに気づいた」とマークさんは言う。

今年4月、マークさんは顔の筋肉層と脂肪の位置を調整してたるみを解消する「ディーププレーン・フェースリフト」という施術を受けることにした。

ロイターが男性患者6人および十数人の美容外科医に取材したところ、減量薬の普及や交流サイト(SNS)での情報共有、さらには「男性らしさ」に対する認識の変化により、より多くの男性が美容クリニックを利用するようになっているという。

こうした動きは、美容施術に対する男性の意識が大きく変化していることを表している。クリニックの客層を一変させると同時に、急激な減量によって生じる問題に対処する商品を開発する企業にとっても新たな商機を生み出している。

マークさんの主治医で、ニューヨークで美容外科を営むショーン・アレミ医師は「ここ1―2年で、担当する男性患者の数はほぼ2倍に増えた」と語る。同医師によれば、患者の多くは痩せたことをきっかけに来院しており、その大半がゼップバウンドなどのGLP-1受容体作動薬で体重を落とした人たちだという。

美容整形を受ける人の圧倒的多数は依然として女性だが、近年は男性の間でも需要が高まっている。

アメリカ形成外科学会によると、2024年には男性が170万件の美容整形施術を受けた。これには手術だけでなく、レーザーによる肌再生治療、ボトックス注射といった低侵襲治療も含まれ、前年比で2.7%増加した。このうち手術は9万8000件を超え、まぶたの整形、脂肪吸引、腹部のたるみ取り(タミータック)などが上位を占めた。

新しい経口薬をはじめとする減量薬が今後さらに市場に投入されることで、需要は今後も増加し続けると医師らは見込んでいる。

同学会会長のボブ・バス医師によると、26年第1・四半期に外科的施術を受けた男性の約70%にGLP-1の使用歴があったという。

若い男性がたるんだ皮膚を除去してアスリートのような体型に見せるための施術を求めることが多いのに対し、年配の男性は顔や首元を中心とした加齢のサインを気にする傾向があると医師らは指摘する。

<「自分に自信を持ちたかった」>

遠隔医療サービスを手がける「グッドRx」のデータによると、26年に減量薬の処方を受けた人のうち男性が占める割合は28.3%となり、4年前の18.3%から大きく上昇した。

マイアミの美容外科医ライアン・マークス医師は「それまで美容整形など考えたこともなかった男性が20―40キロ痩せ、筋トレを始め、服を買い替える。すると、健康的になった今の自分と、かつて太っていた頃の面影を残す体とのギャップを強く突きつけられることになる」と語った。同医師のクリニックでは患者に占める男性の割合が昨年の30―40%から約60%まで上昇した。

カリフォルニア州ランカスター在住のトラック運転手ウォルター・バリエントスさん(45)は、運動だけでの減量に限界を感じ、昨年11月にイーライリリーの肥満症治療薬候補「レタトルチド」の治験に参加した。これまでに計29キロ減量し、現在の体重は89キロだ。

「海やプールに行って、堂々とシャツを脱ぎ、自分にもっと自信を持てるようになりたい」とバリエントスさんは訴えた。「自分自身に対して満足したかった」

彼は7月に腹部のたるみ取りに続いて腹部、脇腹、胸部の脂肪吸引などの手術を受けた。次は歯科インプラント治療を予定している。

バリエントスさんの主治医でビバリーヒルズに拠点を置く形成外科医マイケル・オミディー医師は、カウンセリングに訪れた患者が抱く具体的な悩みを理解することから治療を始めるという。

「患者が手術を希望する場合、その悩みが毎日頭から離れないなら、一歩踏み出せばいいと思う」と同医師は話した。ボディーラインを整える施術を手がけるエアースカルプト社の外科医であるキャンディス・キッチラー氏は、男性の顧客が以前の10%以下から20%超に増加したと推定している。

ニューヨークで事業を営むモハメド・ワラドさん(27)は半年前に同社で手術を受けた。GLP-1を使用した後、腹部回りの体型だけが不自然に感じられたためだ。

「痩せているのに体脂肪が多い、いわゆる『痩せ型肥満(スキニーファット)』の体型だった」とワラドさんは振り返る。「上半身のサイズはMなのに、全体的にバランスよく見えるようにXLの服を着なければならなかった」

<高額な施術費用>

美容整形手術には数千ドルの費用がかかり、通常は保険適用外だ。

アメリカ形成外科学会によれば、男性の女性化乳房手術の平均施術料は5000―9000ドル(約80万―144万円)、フェースリフトは最大1万9000ドル(約304万円)に上る。麻酔代や手術室の使用料などの関連費用が加わるため、実際の支払額はさらに高くなる。

それでも患者らは、これらの施術によって「理想の自分」になれたと実感している。

マークさんはこう語る。「間違いなくそれだけの価値はある。最初に見積もりを出されたときは、確かにショックを受けた。でも振り返ってみて、後悔は全くない」

<新たな投資分野>

UCLAヘルスに勤務する皮膚科医のデライラ・フーラッド医師によると、皮膚のたるみに加えて、急激な減量による生理的ストレスが引き金となり、一時的な脱毛症を経験する患者もいる。

医師らは、患者の髪の悩みを解決するため、多血小板血漿(けっしょう)注射やミノキシジルなどの医薬品、場合によっては未承認のペプチド投与などを行っている。

米国のペラージュ・ファーマシューティカルズ、ベラダーミクス、スイスのコスモ・ファーマシューティカルズといった医薬品企業は、薄毛に関する新たな治療法の開発を進めている。イーライリリーが主導する投資家グループは6月、脱毛症に対処するための抗体研究資金としてアブサイに1億ドルを出資した。

コスモのジョバンニ・ディ・ナポリ最高経営責任者(CEO)は「GLP-1で体重を落とし、見た目が良くなった男性は、髪の状態にも強いこだわりを持つようになるものだ」と述べた。

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