Maria Cheng

[オタワ 2日 ロイター] - カナダ首都オタワ西部の緑豊かな住宅街には「トランプ通り」がある。この地域にはセントラルパーク、ブルーミングデール・ストリート、ゴッサム・プライベートなど、米ニューヨークにちなんだ通り名が並んでいる。

この通り名が付けられた当時、ドナルド・トランプ氏は主にニューヨーク・マンハッタンの不動産開発業者として知られていた。しかしトランプ通りに20年余り住んでいるダイアン・ホスカーさんは、当初からこの名前が好きではなかった。そして今、米国との貿易摩擦の激化や、米大統領となったトランプ氏によるカナダへの挑発的な発言を受け、オタワ市議会は通りの改名に向けて動き出した。

トランプ氏は最近カナダ製品への新たな関税を導入したほか、オンタリオ湖を「アメリカ湖」に改称する大統領令に署名。こうした行動は、穏健な国民性で知られるカナダで新たな怒りと愛国心の高まりを引き起こしている。

トランプ氏が2025年初めに大統領へ復帰して以降、一部のカナダ人は米国製品の不買運動を行い、米国旅行を控えてきた。だがトランプ氏によるカナダへの最近のさらなる「攻撃」によって、長年の同盟国同士だった両国の関係に、より恒久的な亀裂が生じる恐れも出てきている。通りの名前変更からサプライチェーン、旅行先の選択に至るまで、カナダ人は日常レベルで米国との結び付きを断ち始めており、その動きは貿易摩擦が終わった後も続くかもしれない。

ホスカーさんは「トランプ氏は混乱と破壊の象徴のような存在で、この人から良いことが生まれたためしがない。彼がカナダをからかうような態度が嫌いだ」と語り、トランプの名を冠した通りに住んでいることを他人に説明するのは恥ずかしいと打ち明けた。

こうした中でオタワ市議会のライリー・ブロッキントン議員は、トランプ通りの改名手続きを進めていることを明らかにした。ただ調査や住民との協議、住民が住所変更に伴う各種書類の更新を行う支援などが必要なため、実現までには最長で1年ほどかかる可能性があるという。

市民からは新たな名称として「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつも最後に怖じ気づく)通り」、オバマ元米大統領にちなんだ「オバマ通り」といったユーモアを交えた提案も寄せられている。

ブロッキントン氏は「カナダの首都にある通りの名は、名誉と誠実さを備え、カナダと協力関係を築いてきた人物にちなんで付けられる。トランプ氏はその基準を満たしていない」と言い切った。

ホワイトハウスはコメント要請に回答しなかった。

先週公表されたアバカス・データの世論調査によると、カナダ人の70%超が、たとえ雇用喪失や経済的不確実性を招く可能性があっても、カーニー首相による対米貿易協議の停止決定を支持するとの考えを示した。一方ロイター/イプソス調査では、カナダ製品への関税を支持する米国人は20%にとどまり、オンタリオ湖の改称に賛成する人はさらに少なかった。

このような状況で、カナダと米国の二重国籍を持つ人々の中には、カナダとの結び付きを一段と強める動きも出ている。その1人、カナダ系米国人の天体物理学者サラ・シーガー氏は、カーニー政権が海外から優秀な研究者を呼び戻す政策を進めるのに伴って、マサチューセッツ工科大学(MIT)からトロント大学へ移ることになった。

シーガー氏はカナダのパスポートを更新した際、その担当者に帰国する理由について「カーニー氏は世界中、とりわけ海外で活躍するカナダ人の優秀な人材を呼び戻し、技術、貿易、防衛の分野で米国への依存を減らして国家の自立性を高めるため、10億ドル以上を投じている説明した」と述べた。またパスポート窓口に並ぶ人々からカナダへの誇りを感じ、その光景に胸が熱くなったと振り返った。

<米国と距離置く決意>

家族経営のカナダ企業「チャップマンズ・アイスクリーム」のアシュリー・チャップマン最高執行責任者(COO)は、昨年トランプ政権が最初の対カナダ関税を導入して以来、米国産原料への依存を減らしてきたと話す。

同社は27年半ばまでに、米国産原料の使用量を70%削減することが目標。チャップマン氏は「トランプ政権はまだ数年続く。われわれは自社をどう守るか考えなければならない」と語る。

ここ数カ月で同社は長年取引してきた米国の供給業者9社との関係を打ち切り、アーモンドやサクランボなどの原料をオーストラリアやチリから調達するようになり、利益率が圧迫されても貿易戦争の期間中は値上げを行わない方針だ。

チャップマン氏は「代償を払う覚悟はできている。われわれは脅しに屈しないし、かつて最も親しい同盟国であり友人だった国から、このような扱いを受け入れるつもりもない」と決意を示した。

オタワ在住のプログラマー、デイブ・サモイレンコさん(53)も、米国との距離を置く1人だ。ネットフリックスなど米国系動画配信サービスの契約を解約し、トランプ氏が政権にいる間は米国へ行かないと決めている。「われわれは独立した国家で、自分たちのために立ち上がるべきだ」と訴えた。

サモイレンコ氏さんは「トランプ政権が誕生してから米国へは渡航していない。少なくとも政権が終わるまでは行かないだろうし、その後もしばらくは行かないと思う」と話した。

公式統計によると、今年最初の3カ月間の対米渡航者数は前年同期比で10.6%減少した。米国旅行への支出も13.6%減の50億カナダドルとなる一方、国内旅行は増加した。

アルバータ州エドモントンを拠点とする旅行代理店のメーガン・ウッドワードさんも、最近の関税を巡る緊張を受けて、さらに大きな変化が見られると証言する。「もはや米国向け旅行の予約はほとんど入ってこない。カナダ人は、自分たちのお金をどこで使いたいかについて非常に明確な意思を持っている。われわれが米国旅行を勧めても、多くの客は否定的な反応を示す。お金はカナダ国内で、あるいは欧州で使いたいと考えている」と述べた。

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