サイコウィッツによれば、トラウマが世代を超えて影響する仕組みは「おそらく1つではない」。親のトラウマや精神状態が、家庭の雰囲気や子育て、コミュニケーション、親子関係に影響する可能性があるという。

また、親がトラウマの長期的な影響に苦しむ姿を見ながら育つことで、子供が親の心身を心配し続け、それが自身の精神状態にも影響する可能性があるとサイコウィッツは指摘する。

米エモリー大学の精神医学教授で、グレイディ・トラウマ・プロジェクトの共同ディレクターを務めるアビゲイル・ロットも、子育てのあり方や親子関係、親自身の感情調整や精神面の問題などを通じて、トラウマの影響が子供に及ぶ可能性があると説明する。ロットは本研究には参加していない。

今回の結果についてロットは、トラウマを経験した人の子供への世代を超えた影響を示した過去の研究と一致しており、驚きはないと話す。戦争やジェノサイドを経験した親の子供についても、同様の影響が報告されている。一方、9.11の対応要員だけに対象を絞った点で、今回の研究は「独自性がある」という。

サイコウィッツは、「災害への備えでは、対応要員本人だけでなく家族への長期的な心理的影響も考慮する必要がある」と指摘する。「問題が何年も続いたり、時間がたってから表面化したりすることもある」。トラウマを負った本人だけでなく家族全体を早い段階から支援することで、子供への長期的な影響を減らせる可能性があるという。

ロットも、「親子の強いつながりや愛情のある子育ては、親がPTSDなどを抱えていても子供への影響を和らげる可能性がある」と指摘する。さらに、対応要員とその家族が利用しやすいメンタルヘルス支援や、困難から立ち直る力を高めるプログラムを整えることが重要だと述べる。

Reference

Cycowicz YM et al. (2026) The long shadow of 9/11: Mental health outcomes in adult children of World Trade Center Responders with PTSD. PLOS Mental Health. https://doi.org/10.1371/journal.pmen.0000574

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