火災時の法善寺境内地見取図

火災時の法善寺境内地見取図 (山本英夫・作図)『ミナミ再生を語り継ぐ 繁華街の環境浄化とまちづくりの実践』(遊文舎)より

法善寺横丁が火に包まれたのは平成14年9月9日のことだ。隣接していた旧中座解体工事のさなかにガス爆発事故が発生した。炎は横丁にも広がり、合計19店舗が被災する。

火災の直後、この路地は「大阪の文化」であり、元通りに復興して欲しいという声が、文化人や常連客のあいだから湧きおこった。また義援のための募金集めも自発的に始まった。しかし現行の建築基準法では道路を4m以上に拡幅しなければならない。また各店舗は大幅に面積を削られることになる。

これに対して、横丁の雰囲気を維持するべきだという世論がたかまる。なかには、超法規措置を請願するべしという無責任な外部の声もあった。私は被災者のなかに同級生がいたことから、山本氏とともに専門家として横丁の復興をサポートすることになる。

大阪市と意見交換しつつ、法善寺横丁に固有の雰囲気を継承しながら、迅速な再建を進める方策はないかと熟考した。結果、建築基準法86条第2項に位置づけられた連担建築物設計制度を適用してはどうかということになった。

土地所有者、借地権者全員の同意を前提として、街区全体をひとつの敷地とみなす制度である。2.7mの幅しかない横丁を、いわば敷地内の「通路」とすることで、道幅を保持したまま再建することが可能となる。

連担建築物設計制度の認定基準(大阪市都市整備局)

                                            連担建築物設計制度の認定基準(大阪市都市整備局)

袋小路となっている町家が密集する京都の住宅地では先例があったが、歓楽街での適用は初めてであった。また認定に向けて、防火上の配慮など、一定の条件を満たすことが求められた。

法善寺横丁の場合は、3階建て以下の耐火建築物とし、すべての建物が避難バルコニーを設置することが求められた。いずれかで火事が起こった場合にも、3階にあがれば隣の店に簡単に逃げることができるようにした。

さらに法善寺横丁の風情、景観を残し、安全で安心なまちなみを再建するため、地元関係者の自発的総意に基づいた建築協定を締結することが認定基準に追加された。

こうしてようやく復興のめどがたったが、平成15年4月2日、横丁の中から再度の火災が発生する。先の火災では被害が限られていた南側の区画に延焼、私の友人の母親が亡くなった。防災に特化したまちづくりを約束したなかでの出来事であり、苦難が継続する。