
(左)再建後の法善寺横丁(右)焼失前のファサードを復元した店舗(筆者撮影)
ただ地元の飲食店主たちの絆は強かった。平成16年3月27日にすべての店が営業を再開した。私は「法善寺横丁まちづくり憲章」を地元で制定することを提案し、起草のお手伝いをした。
憲章では、良き大阪の伝統を守りながらも新たな文化を生み出すこと、「人間味のある空間」と景観を大切にすること、復興の経験を他の街に伝えるとともに次の世代に継承することなどを列記した。
2度目の火災現場跡に祀られた地蔵尊の近傍に、憲章を掲げていただいた。ここで商いする人が日々、目にすることで、支援をいただいた多くの人への感謝を忘れず、将来にわたっても火事を起こさないという誓いとしたいと考えたからだ。
都市の商業地区は、新陳代謝こそが活力である。店の入れ替わりも激しく、わずかな期間に景観もダイナミックに変化する。消費者の好みも、常にその時代の流行に左右される。繁華街や盛り場をめぐる文化的な言説は、停滞ではなく変化によってこそ論じることができる。
ただそこにあって忘れてはいけない、また次世代に継承しなければいけないことがあるのではないか。そのひとつが地域の人たちが共有した苦難と克服の経験ではないか。『ミナミ再生を語り継ぐ』という著書のタイトルに、私が託した思いである。

2度目の出火場所に設けられた地蔵(筆者撮影)
橋爪紳也(Shinya Hashizume)
1960年大阪市生まれ。大阪公立大学名誉教授、大阪アーバンデザイン&マネジメントセンター所長。京都大学工学部建築学科卒、同大学院修士課程、大阪大学大学院博士課程修了。建築史・都市文化論専攻。工学博士。公益社団法人商業施設技術団体連合会会長、一般社団法人生きた建築ミュージアム大阪理事長、一般社団法人美食都市研究会会長、イベント学会副会長、大阪商工会議所都市活性化委員会副委員長、大阪府市文化振興会議会長などを兼職。『大阪万博の戦後史』『都市大阪の戦後史』『大大阪モダニズム遊覧』『大京都モダニズム観光』『瀬戸内海モダニズム周遊』ほか著書多数。日本観光研究学会賞、日本建築学会賞、日本都市計画学会石川賞など受賞多数。
