今、世界経済に影を落としているのは、中東情勢によるエネルギー価格の高騰や地政学的な混乱だけではない。世界では既にエルニーニョが始まっているのだ。

エルニーニョは、赤道付近の太平洋の海面水温が平年より高い状態が続く自然現象である。大量の熱が大気へ放出され、世界各地で降水量や気温が変化し、干ばつや豪雨などの異常気象を引き起こす。

ありふれた自然現象に思えるかもしれないが、影響は極めて深刻だ。過去のエルニーニョは世界経済に少なくとも数百億ドル、推計によっては数兆ドル規模の損失をもたらし、世界で数千万人が影響を受けたとみられる。

しかも今回は、観測史上最も強力なエルニーニョの1つになると予測されている。世界では2015年から観測史上最も暑い11年間が続いており、各国政府は警戒を強めている。

エルニーニョは「世界の食料システムに連鎖的な機能不全を引き起こす、もしくはそれを助長する可能性がある。さらに、途上国では紛争や経済の弱体化を招く重大な要因になり得る」と、米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のカレン・ヘンドリックス上級研究員は指摘する。

今年のエルニーニョは勢力を強めており、冬にかけてピークを迎える見通しだ。米海洋大気局(NOAA)は、その勢力が4段階評価で最高の「非常に強い」レベルに達すると予測している。

NASAの食料安全保障・農業プログラム「NASAハーベスト」に参加している米メリーランド大学のブライアン・バーカー上級研究専門員によれば、この規模のエルニーニョは過去に4回しか発生していない。直近は2015~16年で、雨期を迎えるはずだったアフリカ南部とインドは深刻な干ばつに見舞われ、南米では各地で壊滅的な洪水が発生。多くの農家が生計を脅かされ、地域社会にも重い負担がのしかかった。

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