David Lawder Andrea Shalal

[ワシントン 25日 ロイター] - トランプ米大統領は昨年の復帰後、貿易相手国との関税を巡る調査に時間を割く余裕はなく、相手国に即座に圧力をかけて譲歩を引き出そうとしていた。結果として混とんとした通商政策を導入したが、今年の連邦最高裁で敗訴したことで覆された。トランプ氏らは現在、より伝統的で司法の検証を経た方法により、より強固な関税の壁を築くという新たな段階へ移行しつつある。

各国が強制労働で生産された製品の輸入禁止措置を十分に講じていないとして60カ国・地域からの輸入品に10%または12.5%の関税を課すことは、今後数カ月以内に発表される多くの関税措置の第1弾となる。これらには、産業の過剰生産能力に関する調査、ベトナムによる知的財産権の侵害疑惑、半導体からロボット工学、産業機械に至るまでの戦略的産業に対する国家安全保障上の保護措置などが含まれる。

米国とカナダの間の貿易を専門とするカナダの石油生産企業セノバス・エナジーのアソシエイト・ジェネラル・カウンシル、ダン・ウジェゾ氏は「私たちはトランプ関税政策の始まりの終わりに差し掛かっている」とし、「今後数週間以内に、遅くとも夏の終わりまでには、トランプ氏の貿易政策の大部分が完全に発効することになるだろう」との見方を示した。

これにより、企業にとってはトランプ氏が発動する最終的な関税構造がより明確かつ確実なものとなる。一方で3兆4000億ドル規模を輸入している米国市場へのアクセスを守るため、各国通商当局の間ではさらなる譲歩を余儀なくされることへの懸念が高まるだろう。

<直接的な代替措置に>

通商法301条を根拠とし、強制労働で​生産された製品の輸入禁止措置に基づくとした新関税は、今月24日に失効した各国への一律10%の関税をほぼ直接置き換えるものだ。米通商代表部(USTR)によると、この措置は米国の輸入の99.4%を対象としている。

これによってトランプ氏が「解放の日」をうたい、ほぼ全ての国に10―50%を課した「相互関税」の一部が復活する。相互関税は前例がなかった国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、連邦最高裁が違法だと判断して無効化していた。

さらに、過剰な産業生産能力を対象とした通商法301条の調査により、上乗せ関税も復活する見通しだ。この調査は中国と欧州連合(EU)、日本、韓国、メキシコ、ベトナムなど計16の主要貿易相手を対象としている。

トランプ氏の措置に対する反発が広がっている中で、一部からはおおむね現状維持に過ぎないと見なす声も出ている。

米中西部ミシガン州に拠点を置く掃除機メーカー、ビッセルのマーク・ビッセル最高経営責任者(CEO)はロイターへの電子メールで、新たな関税措置について同社がおおむね予想していた範囲内だとし、関税を回避するために同社が中国などから前倒しで在庫を上積みすることはなかったと説明した。

ビッセル氏は「当社は関税が10―15%の範囲内にとどまるとの確信に基づき、事業を継続してきた」とコメントした。

<歳入への影響>

トランプ氏が復帰後、迅速ではあるものの実績のない関税措置に賭けたことで四つの結果がもたらされた。それらは小売業者や他の輸入依存型産業に追加コストを課したこと、関税引き下げを求める数十の貿易相手国・地域を交渉の場に引きずり出したこと、中国からの迅速な報復措置と報復関税の連鎖を招き、それが微妙な休戦状態につながったこと、いったんは米国の歳入を数千億ドル相当増やしたことだ。

「解放の日」を宣言して導入した関税だけで1660億ドルの歳入が得られ、拡大する連邦財政赤字を大幅に相殺したが、輸入業者への還付によって現在は徴収した金額を上回る支出を迫られている。

トランプ氏は通商‌法122条に基づいて150日間限定で10%の暫定関税を課したことで、今月5日までに310億ドルの追加歳入見込みをもたらした。しかし、これを無効とする連邦裁判所の判決が確定すれば、その歳入も還付の対象となる。

米国の公的債務残高が40兆ドルに迫る中で、アトランティック・カウンシルで国際経済部門を統括するジョシュ・リプスキー氏は、トランプ氏が退任後の政権も持続的な関税収入に依存するようになる可能性があると指摘。その上で「関税の壁は強固なれんがを一つずつ積み上げて再建されており、非常に頑丈だ」との見方を示す。

一方、新関税は大統領の権限を逸脱しているとして一部の中小企業が既に提訴しており、貿易や法律の専門家らは決着には時間がかかるとみている。

<さらに続く>

USTRのグリア代表は議会上院財政委員会で、トランプ氏が生産の国内回帰と貿易赤字の縮小を意図した関税を課すため、あらゆる手段を講じる方針を表明。「現政権が活用する具体的な権限は変わったが、貿易戦略自体は変わっていない」と主張した。

グリア氏は産業能力の調査に関するスケジュールについての明言を避けている一方、再構築する関税は自身が交渉してきた合意に含まれる上限を超えないと説明する。上限は欧州連合(EU)、日本、韓国に対しては15%で、東南アジア諸国に対してはそれを上回っている。

トランプ政権の当局者によると、中国は世界最大の製造業過剰生産国と見なされている。それでも、中国への輸入関税はトランプ氏と中国の習近平国家主席が昨年11月に合意した上限である約20%を超えないという。この上限は、第一次トランプ政権時代に中国への輸入品に課した25%の関税に上乗せされる。

アナリストらはこうした枠組みについて、合意した貿易協定の条件を順守させるための執行メカニズムである可能性を指摘している。

とはいえ、依然として予期しない事態が相次いでいる。一例としてカナダが貿易交渉で譲歩を拒んだことを受け、トランプ氏がカナダ産のビール、乳製品、ホッケースティックなどに対する50%の輸入関税を課すと表明したことや、北大西洋条約機構(NATO)の防衛費支出目標を達成していないことを理由にスペインとの全ての貿易関係を停止すると脅した事例などが挙げられる。

元国際通貨基金(IMF)の中国担当幹部で、通商を専門とするコーネル大のエスワー・プラサド教授は、こうした突発的な関税発表の傾向は継続的なリスクだとして「あらゆる不満に対処するために関税を課そうとするトランプ氏の熱意は、世界貿易体制に混乱をもたらし続けるだけでなく、米国民の家計や米国企業にも重大な悪影響を及ぼすだろう」と警鐘を鳴らした。

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