ヤクザが街を仕切り、守られていた秩序もあった
だが、歌舞伎町は大きく変貌した。当然ながらそれは(東京では2011年に施行された)暴力団排除条例の影響だ。もちろん条例が施行されたことのメリットは大きいだろうし、そもそも私はここでヤクザを擁護したいわけではない。
しかし本書によれば、ヤクザが街を仕切り、ときには揉め事の仲裁役を担っていたりもしていたからこそ、守られていた秩序もあったようだ。
その証拠に、歌舞伎町の大久保公園やその周辺のラブホテル街、ハイジア(東京都健康プラザ ハイジア)付近に立っている「立ちんぼ」のヤクザに対する反応は、こちらのイメージをはるかに超えたものだった。
「最近は俺たちが『この辺りに立つなよ』って言っても、女の子は『うるせえジジイ!』とか言ってくる。それにいちいち対処していたらくだらないトラブルになるだけですよね。それで、すぐカメラ向けてきて。それがリアルですね、今は」と苦笑いしながら語るのは指定暴力団二次団体幹部B氏。(33ページより)
いかにもイケイケの外見をしたB氏に「うるせえ」と怒鳴る20代前半の女の子は、「タガが外れている」と著者は指摘している。確かにその通りだ。特に、すぐカメラを向けてくるあたりに“嫌な感じのリアリティ”があるが、それもまた、歌舞伎町の変貌を象徴する出来事のひとつなのかもしれない。
興味深いのは、こうした現状に関する著者の見解だ。立ちんぼの原因は、30年間におよぶ自民党を中心とした与党の経済政策の失態だと指摘するのである。
ずっと日本は不況のままだ。考えてほしい。豊かな国に立ちんぼはいない。いても、外国からやってきた出稼ぎであり、日本人が日本の繁華街で立つことはなかった。貧困が我が国全体の問題となっているが、歌舞伎町の片隅にもその一般が見られる訳だ。(36ページより)