Shariq Khan Robert Harvey
[ニューヨーク/ロンドン 10日 ロイター] - ロシアが軽油輸出を禁止したことを受け、世界のエネルギー市場に混乱が広がり、供給逼迫(ひっぱく)が加速して価格が急騰している。ロシア産燃料を輸入していない米欧でも価格が上昇しており、世界経済への影響が懸念される。
軽油(ディーゼル燃料)は世界の石油消費量の中で最大の割合を占める燃料で、工業機械や農業機械、大型輸送車両、発電設備など幅広い用途で利用されている。このため価格高騰は産業活動全般に波及しかねない。
本来世界の軽油市場は、新型コロナウイルス禍からの需要回復に加え、欧米での製油所閉鎖に伴う精製能力の低下により、数年前から供給が引き締まっていた。さらにイランを巡る軍事的緊張が市場への圧力を強めている。
米国に次ぐ世界第2位の軽油輸出国であるロシアでは、ウクライナによるドローン(無人機)攻撃が響いて国内で供給不足が発生しており、輸出は禁輸措置前から減少傾向にあった。
ケプラーによると、ロシアの軽油・ガスオイル輸出量は7月1─10日に日量23万4000バレルと、6月の日量40万バレルや2025年平均の日量81万7000バレルを大きく下回った。
供給懸念に拍車をかけたのは中東情勢の緊迫化で、ロシアの輸出禁止発表から数時間後には、米国によるイランへの攻撃が実施され、原油や石油製品の海上輸送の大動脈であるホルムズ海峡の通航への影響や、中東からの輸出減少への警戒感が高まった。
また米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が公表した統計によると、7月3日時点の米国の軽油在庫は前週比450万バレル超減少し、9780万バレルと過去5年平均を6%下回る水準に沈んだ。
こうした供給不安を背景に、軽油価格は米国と欧州で急騰。米国の超低硫黄軽油先物価格は8日に11%上昇して1バレル=154ドルに達し、原油の指標WTIに対する上乗せ幅(プレミアム)は80ドルとなった。
欧州でも低硫黄ガスオイル先物のブレント原油に対するプレミアムが1バレル=60.77ドルと過去最高を記録した。
市場関係者は、ロシア産軽油輸出の減少によりブラジルやトルコなど従来の輸入国が米国産軽油を求めて欧州と競合する構図になると指摘する。これにより電力や農業分野にも影響が及ぶ可能性がある。
例えば軽油価格の上昇は、南半球での作付けシーズンや北半球での収穫期を前に農業コストを押し上げる恐れがある。ブラジルと米国中西部の農家が同じ供給源を巡って競争する事態も想定される。
英コンサルティング会社FGEネクサントECAのチリン・タム精製部門責任者は「米国はホルムズ海峡の混乱を受けて欧州向け軽油供給の主力となったが、中南米向けに振り向ける数量が増えれば、その分欧州向け供給は減少する。米国や欧州アムステルダム・ロッテルダム・アントワープ(ARA)地区の在庫が歴史的に低い水準にある中でこの事態が起きている」と警戒感を示した。
さらに中東情勢の緊張再燃に伴って、中国が7月に実施した燃料輸出規制の緩和が8月以降も継続される保証はなく、アジアからの供給増による市場安定化への期待も不透明な状況となっている。