カーティン大学によるもう1つの関連研究でも、これまで見過ごされてきた筋力や身体組成が、認知症リスクに大きく関わっている可能性が示された。

この研究では、成人約50万人を10年以上にわたって追跡調査した。その結果、筋力が低く、かつ体脂肪が過剰な状態である「サルコペニア肥満」の人は、認知症の発症リスクがより高いことが判明した。

特筆すべきは、筋力が維持されている場合、肥満単体では認知症リスクの上昇とは関連していなかった点だ。この知見は、単に体重を減らすことだけに目を向けるのではなく、健康的な身体組成とともに筋肉の健康を維持することの重要性を浮き彫りにしている。

オスロ大学の神経科学者であるラウラ・ボヤルスカイテは、2つの研究結果について、「特に重要なのは、情報を伝えるだけでは人々の行動はほとんど変わらないという厳しい事実だ」と述べる。

「この分野は長年、リスク要因の特定に注力し、今や運動不足や喫煙、難聴、教育水準の低さ、社会的孤立といった主要なリスクは明らかになった。今回の検証は、問いを『リスクは何か』から『なぜ人々は行動に移さないのか』へと転換した。啓発活動をすれば知識は確実に増えるが、知識と行動はまったく別物だ。これこそが、より困難で本質的な課題だ」

ただし、「予防可能」というのは集団全体を対象とした試算であり、個人の発症を防げるという保証ではないと、ボヤルスカイテは指摘する。発症した人に対して、本人の生活習慣が悪かったせいだなどと責める口実にすべきではない。

これらの知見を総合すると、認知症の予防活動は単に情報を届けるだけでは不十分であり、活動を通じて人々に能動的に関わり、個々の状況に合わせたアドバイスを提供し、地元の信頼できる人物を巻き込むべきだと研究者は指摘する。

また、今回の結果によって「改善可能なリスク」の意味が広がった。運動不足や孤立といった広く知られている要因に加え、筋力の維持も、認知症リスクを減らすための重要かつ実践可能なアプローチになりつつある。そしてそれは、単なる体重管理だけでなく、筋力トレーニングなど筋力に着目した対策によって十分に手が打てるものだ。

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