今年1月に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で、カナダのマーク・カーニー首相の演説が話題を呼んだ。もはやアメリカを、国際秩序の盟主として以前のように信頼することはできなくなった時代に、どのように国際秩序を再建するかについての率直かつ示唆に富む演説だったからだ。
カーニーは、もはや「ルールに基づく国際秩序」も、その擁護者としてのアメリカも存在しない、存在しない旧秩序へのノスタルジーに浸り、行動を変えない理由にしてはならないと訴え、大国のルール違反による国際秩序の崩壊に歯止めをかけるべく、ミドルパワー(中堅国家)は結束しなければならないと訴えた。
カーニーが警鐘を鳴らした旧秩序へのノスタルジーに最も浸っているのは、日本ではないか。トランプ政権は同盟国との調整もなくイラン攻撃に突き進み、ホルムズ海峡の封鎖という事態を招いた。
事態を打開できないことへのいら立ちを強めたトランプは、米海軍ですら任務をためらうほど危険な状況にあるホルムズ海峡へ、同盟国ならば艦船を派遣せよとの要請を強めた。これを受けて日本では、アメリカの艦船派遣要請にどのように応じることができるか、必死の検討が行われた。
しかし他の同盟国が艦船派遣に応じないなか、日本が艦船を数隻送ったところで、ホルムズ海峡の封鎖問題が打開されるはずもなく、無駄に艦船を危険にさらすだけに終わった可能性も高い。日本は、明らかに不合理な要求を突き付けられたときですら、アメリカを怒らせないように振る舞い続けている。
イラン戦争はどのような形で終わるにせよ、アメリカの衰退を促進し、多極化世界の到来を早めるだろう。私たちが知っていた国際秩序もアメリカももう戻ってこない。こうした時代認識に立ち、日本外交の針路を改めて見定めていく必要がある。
超大国の現在地と「トランプ後」の世界