Noriyuki Hirata

[東京 1日 ロイター] - ドルが162円後半と約40年ぶり高水準に上昇する中、政府・日銀の為替介入への警戒感が高まっている。これまでの介入の経緯と合わせて、現在はいわゆる「令和のブラックマンデー(暗黒の月曜日)」前に実施された24年7月の介入時に似ているとの見方もある。高ボラティリティー(変動)のマグマ蓄積が意識される中、当時は株安とともにドルが約20円下落した経緯があり、再現するかに関心が寄せられている。

<既視感>

6月後半以降、追加介入への警戒感が高まっている足元の局面について、ある邦銀のディーラーは「デジャブー(既視感)を否定できない」と話す。4月末から5月初旬の大型連休中の介入に続いて7月に追加介入となれば、24年の介入と同様のパターンをたどることになるからだ。

24年はドルが7月3日に当時の高値161.96円をつけた後、7月11―12日の介入を経て下げ基調を続け、日経平均が過去最大の下げ幅を記録。「令和のブラックマンデー」とされた8月5日に141.67円まで下落した。

偏ったポジションの巻き戻しの「マグマ」が溜まってきている点も、24年と似ているとされる理由の一つだ。

米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、‌投⁠機筋のポジション動向を映すとされるIMM通貨先物の非商業部門​の取り組みでは、足元で円売り越し(ネットのショート)が約14万枚と膨らんでいる。24年の介入前の約18万枚ほどではないが、円売り建玉(グロスのショート)だけを切り出すと約26万枚で、こちらは24年の約22万枚を上回る。介入をきっかけにこうしたポジションが巻き戻されることで、円高が促されるとみられている。

<24年との相違点>

仮に今回も介入があった場合、24年と同等のドル急落となるか、市場では頭の体操が繰り広げられている。ただ、当時とは相違点も多く、ドルの下押しはそれほど大きくならないとの見方が有力となっている。

オプション市場では、為替介入に対する短期的な警戒感の高まりが観測される。プットとコールオプションの価格差を示すリスクリバーサルは、1週間物が24年介入前の水準を上回っており、いつ介入があってもおかしくないとの警戒感が示されている。

一方、中長期では円安継続との見方が優勢な様子がうかがえる。リスクリバーサルの1カ月物より長期では24年当時の水準を下回っており「介入があっても一時的との見方だろう」とあおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット​・ストラ⁠テジストは指摘している。

24年当時は、介入後の金融政策決定会合で日銀が利上げし、直後の米雇用統計が弱い数字となって景気懸念につながったことがダメ押しとなり、ドルの下げが加速。株安も重なりスパイラル的に下落した。今年は日銀の利上げが6月に決まったばかりで米雇用関連指標も底堅く、利上げ期待が高まってきている。

東短リサーチと東短ICAPによるオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)気配中央値によると、7月会合での利上げ確率は1日時点で3%にとどまっている。6月30日発表の5月米雇用動態調査(JOLTS)によると、求人件数は24年5月以​来の高水準となり、米国での年内利上げの思惑が高まった。「金融政策を伴わない介入は効果が限られる」と諸我氏はみている。

需給面でも違いがある。円売り建玉が24年より多いのに円売り越しが少ないのは、円買いの建玉(グロスのロング)が約11万枚と24年の約4万枚より大きいことが一因だ。「介入を見越した買いが入っている」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジスト)との見方があり、実際に介入が入れば売り戻され、介入による円高圧力が緩和されると見込まれている。

構造的な円売りの強まりも意識されている。海外のIT企業などのデジタルサービス利用に伴う支払いを示すいわゆる「デジタル赤字」は24年に7兆円弱と10年前の3倍超に増えており「その後も着実に増えている」と植野氏は話す。海外株の投資信託が人気の新NISA(少額投資非課税制度)の5月末までの累計買い付け額をみると24年の6.6兆円が今年は9兆円に増えている。

介入はあくまで対症療法との見方は根強い。あおぞら銀の諸我氏は「政府の円安に対するスタンスを見極めたい」と話す。足元では政府による積極財政姿勢の強まりや、日銀の独立性が脅かされかねないとの警戒が浮上。骨太の方針の原案で、政府との緊密な連携の上で金融政策運営を行うことを明記するなど、市場では日銀の利上げへのけん制との受け止めが広がった。

「積極財政の裏付けとなる財源を明確にし、日銀に実質マイナス金利の早期解消を促すようなら、日本サイドからの円安圧力は和らぐ」(三菱UFJMSの植野氏)との声が出ている。

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