政治的な動きに影響されるのも初めてではないが
アメリカ在住の不法移民を厳しく取り締まってきた移民関税執行局(ICE)が、会場周辺の「警備」に加わることも発表された。J・D・バンス米副大統領は、自国チームの応援に来た外国人は、大会終了後に速やかに帰国しなければ、ICEの世話になるだろうと警告した。
もっとも、W杯に開催国の政治情勢が影を落とすのは、これが初めてではない。34年イタリア大会は、ベニート・ムソリーニ首相によってファシズムの祭典へと変えられた。78年アルゼンチン大会は、軍事政権によって多くの市民が拉致・殺害されるなかでのサッカーの祭典となった。
商業的な色合いが強くなった現代のW杯でも、開催国の政治が大きな議論を呼んできた。22年カタール大会は、短期間に巨大スタジアムを多数建設するために、外国人労働者が奴隷的な労働を強いられたことが国際的な批判を浴びた。
皮肉なのは、インファンティーノはFIFAの悪しき伝統を一掃するリーダーとして登場したことだ。FIFAは10年代にW杯誘致活動をめぐる大規模な不正が明らかになり、当時の幹部が大量に職を解かれた。インファンティーノはサッカー界から腐敗を一掃する改革派として16年の会長選に出馬し、勝利した。
それでも、W杯の商業化は止まらなかった。そして問題は、お金のことだけではない。
次のページ