Phil Stewart Ed Ou  Evelyn Hockstein

[米ノースカロライナ州沖合 30日 ロイター] - 「軍艦はわれわれの海域から出ていけ!」米南部なまりの警告が、無線を通じて響き渡った。

ノルウェー海軍のトマス・ヨハンセン中尉と乗組員は、北大西洋条約機構(NATO)海上部隊の中核任務の一つである臨検を想定した訓練の準備を進めていた。しかし、周辺海域は複数の軍事演習が同時進行しており、近くを航行する別の艦船の交信が混線していた。

ヨハンセン氏は周波数を切り替え、視界に入った貨物船に、「停止し、臨検チームの乗船を受け入れてください」と指示した。

ロイターは6月26日、米東海岸と大西洋上で実施された大規模な多国間海上軍事演習「FLEETEX 250」の一つを独占取材した。この演習は米本土防衛をテーマとし、米建国250周年に合わせて実施された。

ただ、演習が行われたタイミングは、NATOにとって極めて微妙な局面と重なった。トランプ米政権は、創設77年を迎えたNATOの価値そのものに疑問を投げかけ、欧州における米軍の配備態勢を見直し、長年の同盟国への批判を強めている。

トランプ氏は最近、米ホワイトハウスの大統領執務室でNATOのルッテ事務総長と会談した際に、対イラン軍事作戦への支援が不十分だとして、英国、スペイン、ドイツ、フランスを名指しで批判。「われわれは、こうした国の大半に失望している」と述べた。

第1次トランプ政権時代にNATO情報部門トップを務めたデービッド・キャトラー氏は、今回の演習は欧州諸国が大西洋の両岸を防衛する能力と意思を備えていることを示す強力なメッセージになるとの見方を示しつつ、演習によって米国防総省の考え方が変わる可能性は低いと指摘。「実際に変化が起きるとは考えにくい」と述べた。

<同盟関係に不安>

トランプ氏は以前から、米国は欧州の安全保障を過度に負担していると主張。米政界で長年続いてきた超党派によるNATO支持の流れを揺さぶってきた。

ヘグセス米国防長官は6月中旬にNATO本部で演説し、欧州駐留米軍の削減につながりかねない、6カ月間の戦力態勢見直しを実施すると発表。安全保障上の恩恵を享受しながら十分に負担しない「ただ乗り」の同盟国を批判し、同盟関係は双方向のものでなければならないと強調した。

イランを巡る紛争でこうした緊張は一段と深まっている。ロイターが4月に報じた国防総省内部の電子メールによると、対イラン作戦に際して米軍への基地使用や領空通過を認めなかったとして、スペインのNATO加盟資格停止を検討する案が浮上していた。

それでも、スペイン海兵隊は今回の演習に参加し、艦艇から海岸への上陸作戦訓練を実施。フランス海兵隊も、米ノースカロライナ州にある米海兵隊の主要基地「キャンプ・レジューン」で行われた重機関銃の運用訓練などに参加した。

専門家によると、米軍の実務レベルでは同盟国との協力関係が依然として強く、政治的な混乱を超えて作戦面での結び付きは維持されている。

こうした軍事演習は通常、数カ月前、あるいは数年前から計画される。軍隊にとって、即応態勢を維持するための通常任務の一環だからだ。

シンクタンク米戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員で退役海兵隊将校のマーク・キャンシアン氏は、「中止を命じるような政治的介入がない限り、軍は演習を続行するだろう」と断言。「これは単に、NATOがNATOとして機能しているということにすぎない」と述べた。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。