かつて戦争は不景気の特効薬とされた。第二次大戦によって世界は大恐慌から抜け出し、ベトナム戦争による支出増で米経済は上向いた、と。しかし、これは神話にすぎない。

確かに、10年に及ぶ世界恐慌の後に起きた戦争で兵士や兵器工場労働者の需要が膨らみ、アメリカは完全雇用を回復した。だが世界全体で見れば、敗戦国の日本やドイツをはじめ、膨大な数の命が失われ、いくつもの都市が丸ごと破壊されて産業が壊滅した。そのコストの規模は第二次大戦の「景気刺激効果」をはるかに上回る。

インフラ改善や民間企業への投資ではなく戦争遂行に資源や人的労力を費やすのなら、軍事費という支出は経済的にほぼ無駄になる。カネや人材は戦争以外に使うほうがずっといいはずだ。

つながり合う現代の世界では、戦争は繁栄を阻害する。プーチンがウクライナを再びロシアのものにするという野望に向けて前進すれば、ヨーロッパの東端で泥沼の戦争が起こると想定される。その戦線はバルト3国など、プーチンが目を付けるほかの旧ソ連構成国にも広がるだろう。

「アメリカ・ファースト」を唱える紛れもない孤立主義者、約70年にわたってヨーロッパの平和を守ってきたNATOに懐疑的な人物が米大統領である現状では、戦争勃発で欧州がたちまち景気後退に陥ることもあり得る。

政治学者フランシス・フクヤマは1992年、ソ連崩壊は「歴史の終わり」であり、リベラル民主主義と資本主義が勝利したと書いた。その説を信じた人々にとって、第一次大戦終結から1世紀が過ぎたヨーロッパ、そして世界に広がる混乱は不可解でしかない。欧州市民は今や突然、かつての確実性とかつての同盟関係が崩れ去る不安な世界のただ中に放り込まれている。

今年中、あるいは来年にもヨーロッパで不況は起きるのか。制御不能な事態になるとの見通しが生まれたとき、それは確実に起こる。

<2019年1月15日号掲載>

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政治の行方は結局のところ経済によって決まると、よく言われる。だが、2019年のヨーロッパ経済の行方を占うときはその反対、つまり「経済の行方は政治によって決まる」と言うほうが、極めて現実に近いように感じられる。
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