越境して変異し続ける、特定の国の枠を超えた料理群

だが現地にも日本にも、“ローカライズされていない本来の少数民族料理”も存在している。その一方、中国発祥の料理は海外に伝播して世界各国で“本国には存在しない料理(インド中華や韓国中華、アメリカ中華など)”に生まれ変わったりもする。

つまり、越境して変異し続けるガチ中華は特定の国の枠を超えた料理群であるため、「中国料理」として括ることには無理があるわけだ。

ちなみに東京におけるガチ中華の集中出店エリアは5つあるようだ。

 第一のエリアは、新宿から新大久保、高田馬場、池袋、赤羽に至るJR沿線の「埼京線エリア」。第二は、上野から御徒町にかけての「上野・御徒町エリア」。第三は、錦糸町あたりから亀戸、新小岩、小岩に至るJR総武線沿線の江東区や江戸川区で、さらにJR常磐線や東武伊勢崎線が延びる足立区にも店が多いので、これらを総じて「城東エリア」とする。第四は、JR京浜東北線の蒲田から川崎、横浜にかけての「京浜東北線エリア」。面白いことに、横浜では中華街ではなく、その周辺の伊勢佐木町界隈にかけて店が多い。第五は、JR京浜東北線北部の埼玉県の「西川口・蕨エリア」である。(91〜92ページより)

広く浸透している印象があるが、これらの集中エリアは、それぞれの出店経緯や料理のジャンル、店舗経営のスタイルなどに違いがあるのだという。ひとくくりにはできないわけで、その違いがガチ中華に多様性をもたらしているのだ。

ガチ中華のバックグラウンドにあるのは、歴史的に名高いグルメ大国である中国の21世紀以降の経済成長、そして食に対する真摯な取り組みだ。それらが世界各地に届くようになったということのようだ。

その経緯を観察してきた著者によれば、ガチ中華が徐々に目につき始めたのは2010年代半ばで、2018年ごろから増加に拍車がかかったようだ。

コロナ禍で急増したガチ中華は、膠着状態にある
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