Valerie Volcovici

[オハイオ州ミドルトン・タウンシップ 16日 ロイター] - 米オハイオ州ウッド郡に住むブリアン・キッドさんはかつて、窓の外の農地に昇る朝日を眺めながらコーヒーを飲み、自宅で営む託児所に子どもたちが到着するのを待つのが日課だった。

しかしこの1年間で、目の前の景色はクレーンと鉄骨、砂ぼこりに取って代わられた。ここボーリング・グリーンでは、米メタ・プラットフォームズによる800エーカー(約3.2平方キロメートル)規模のデータセンターが建設されているためだ。キッドさんをさらに不安にさせたのは、説明を受けていなかった設備の出現だ。同プロジェクトに電力を供給するため、専用の大規模な天然ガス発電所の建設が始まったのだ。

キッドさんはアポロ発電所建設地を指差しながら、「2本向こうの通りとかいう話じゃない。文字通り、道路の向かい側だ」と憤った。「脅威の隣で暮らしている」

ロイターが規制当局への届け出を精査し、当局者や住民、研究者、企業幹部に取材したところ、同発電所は、テック業界のデータセンター向け電力需要の急増に対応するために米国各地で急ピッチかつしばしば秘密性の高い形で承認されている、数十の大規模なオフグリッド発電プロジェクトの一つであることが分かった。

これらの発電所は、通常なら必要となる数年規模の認可手続きや環境調査、公聴会を経ることなく、数週間から数カ月という異例の速さで建設が承認される。開発企業側は、こうした民間向けオフグリッド発電所は多くの規制の適用外だと主張する。

その結果、住民は大気質や気候に影響を与える可能性のある発電所について、十分な事前通知を受けられていない。

透明性をさらに低下させているのは、一部の開発業者が地方自治体と秘密保持契約を結んだり、ペーパーカンパニーを通じて事業を進めたりしている点だ。地方当局も公文書を黒塗りにしたり、本来は公聴会が必要となる許認可手続きを迅速化するなどしている。

ハーバード大学の研究員マイケル・コーク氏は、人工知能(AI)産業向けのオフグリッド天然ガス発電について「国内で十分に検証されていない大気汚染リスクの中でも最大級になりつつある」と指摘する。

アポロ発電所は10万世帯分の電力をまかなえる規模で、計画提出から3カ月足らずの2月3日、オハイオ州電力立地委員会(OPSB)に承認された。州の大気排出許可案は、着工後の3月まで公開されていなかったことが記録から判明している。発電所はメタ専用だが、書類上の顧客は子会社「Liames LLC」と記載されていた。

調査会社クリーンビューがロイターに提供したデータによると、個別のデータセンターに供給するために計画中または建設中のオフグリッド発電所は少なくとも米国内に57カ所ある。総容量は7万3000メガワットで、数千万世帯分に相当する。

ロイターはこのうち、住民にほぼ通知のないまま1年未満で承認された案件を10件以上特定した。うち2件は既に稼働しており、メンフィス郊外にあるスペースXのxAIの施設と、バージニア州アッシュバーンでバンテージ・データセンターズに電力を供給する施設が含まれる。

こうしたプロジェクトの承認の速さや規模、迅速化の手法については、これまで報じられていなかった。施設の大半は天然ガスを燃料としており、燃焼時には窒素酸化物や、呼吸器疾患との関連が指摘される微小粒子状物質、さらに温室効果ガスを排出する。

支持派は、こうしたプロジェクトはAIの急速な発展に不可欠で、テック企業に電力を供給しつつ消費者の電気料金を引き上げないと主張する。

トランプ政権は中国との競争を理由に、AI関連インフラの許認可を加速させる方針を掲げている。環境保護局(EPA)やオハイオ、ウェストバージニア、テキサス、ユタなど各州も承認迅速化の政策を提案・導入している。

EPAはロイターに対し、米国を「世界のAI首都」にする取り組みにおいて、慎重かつガバナンス重視のアプローチを取っていると説明し、許認可は州・地方政府が管轄する場合が多いと指摘した。

メタ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトなどが加盟する業界団体「データセンター・コアリション」は、データセンター開発業者は重要な電力供給を確保しつつ「責任ある隣人であり続けることに尽力している」と述べた。

<止めるには速すぎる>

オハイオ州は昨年、一部の発電所について公聴会なしで最短45日で承認可能とする法律を導入し、AI向け電源プロジェクトの承認を加速させた。これがアポロ計画の迅速な承認の一因となった。

州当局はデータセンター開発を経済的なチャンスとして推進している。特にオハイオ州北西部は、土地、水へのアクセス、天然ガスパイプラインへの近さから、テック企業の関心を集めている。

州北西部の地域成長パートナーシップのバイスプレジデント、ゲイリー・トンプソン氏は、同地域に10カ所のハイパースケールデータセンターを誘致したい考えだと語った。

「これらの企業は確実性と電力を必要としている」と同氏は述べた。

一方、一部の住民は節度ある対応を求めている。

ペリーズバーグの住民、ローレン・バーレカンプさんは「ガス発電所1つとデータセンター1つなら問題ないかもしれないが、4つ以上も建つのであれば地域規模の公衆衛生問題になる」と述べた。

アポロ発電所は、パイプライン会社ウィリアムズ・カンパニーズの子会社「ウィルパワー」が建設している。

ウィリアムズの広報担当は、同社が州内で18―24カ月で建設可能な類似プロジェクトを4件開発中だと述べ、施設は州の規制を順守していると付け加えた。同氏は、オハイオ州のEPAが4月にアポロ発電所に関する公聴会を開催したと指摘した。

アポロ発電所の資金提供者であるメタは、パートナー企業は大気質規制を順守する必要があると述べた。

<秘密主義と透明性への懸念>

オハイオ州議会は最近、データセンターのような大規模プロジェクトを公文書公開法の対象外とする条項も可決した。この条項によると、当該情報を公開した当局者は刑事訴追の対象となり得る。条項は、無関係な大学スポーツに関する法案に挿入された。

この機密保持条項は、共和党のブライアン・チャベス州上院議員が追加した。同氏はコメントの要請に応じなかった。選挙資金資料を確認したところ、2025年の同氏への最大の献金者上位2者は、データセンター開発を支持する建設労働組合と公益事業会社NiSourceで、それぞれ1万ドルを献金していた。

支持派は、こうした措置は機微なビジネス情報を保護するためのものだと説明する。批判派は、透明性を損ない、地域社会が意見を表明する機会を制限すると反論する。

ボーリング・グリーン州立大学の政治学者、アンドリュー・キーア氏は「民主主義の基本である透明性と説明責任を損なう」と批判する。

元警察官、クリスティン・コールトリップさんも同意見だ。近隣住民は、データセンター建設の可能性を理由に土地売却を持ちかけられているが、地元当局は詳細を一切提供しないと話す。

「議員が有権者とデータセンターの経済について話したら起訴されかねないというのは、非常に憂慮すべきことだ」

秘密主義は他州でも反発を招いている。

マイクロソフトは3月、ウィスコンシン州での案件に対する批判を受け、全米で秘密保持契約の使用を停止すると発表した。

メタ社は、機密保持契約は立地選定プロセスでは標準的なもので、パートナー企業が市民と関与することを妨げるものではないと述べた。

それでも、ボーリング・グリーンのプロジェクトの詳細は、「Liames LLC」による「プロジェクト・アコーディオン」という名称で、約2年間にわたり詳細が隠されていた。メタは、なぜその名称を使ったかについてコメントしなかった。

許認可と監督をめぐる疑問は、テネシー州とミシシッピ州でも浮上している。両州では、イーロン・マスク氏のxAIが、データセンター「コロッサス」に電力を供給するため、許可を取得しないままガスタービンを稼働させていたとロイターはこれまでに報じた。

同社は、これらの装置は一時的なもので電力系統に接続されていないため、規制の対象外だと説明している。

一方ウェストバージニア州では、議会が昨年、特定のデータセンター向けマイクログリッドを地方のゾーニング(用途地域)法の適用対象外とする法律を可決し、地域住民の反対の手段を制限している。

タッカー郡で計画された大規模ガス発電所は、同年中に州の大気排出許可を取得した。ロイターが入手した公文書では、重要な技術的詳細が黒塗りにされており、当局者は機密情報保護のために必要な措置だと説明した。

<地域社会の懸念>

オハイオ州コロンバス近郊の自治体幹部ブライアン・ローゼンバーグ氏はロイターに対し、同地域の住民はつい最近、アマゾン・ウェブ・サービスのデータセンター向けに、米国で最大規模となるガス燃料電池発電を建設する計画を知ったと明かした。

自治体当局は、緊急時に近隣の小学校の安全を確保するために発電所の詳細を求めているが、電力会社AEPと州規制当局は情報を提供していないという。

「私の最大の懸念は健康と安全だ」と同氏は述べた。「何か問題が起きた時に住民に実験用ラットになってほしくない」

AEPは、緊急時対応情報は地元消防や救急当局に提供していると説明。州のEPAは許可に関する訴訟が係争中のため詳細には言及できないとした。

冒頭の託児所を営むキッドさんも同じリスクを懸念している。

「私の家族と託児所を利用する人々にとって安全は最優先事項だが、今はそれを保証できないと感じる」とキッドさんは語った。

「すべては私たちの手の届かないところで進んでいる」

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