1. ラ・ティルデ 「掘ってもAI」の失敗作
ラ・ティルデの問題は、規模ではなく、その稚拙さにある。デジタルフォレンジックによってずさんな内実が明らかになった。
記事の多くはAIが生成した文章で、署名も発行人も記載がない。画像生成サービスのミッドジャーニー(Midjourney)で量産した画像には、生成に使った指示文の断片がファイル名に残り、柱がいくつも欠けたホワイトハウスや、文字化けした卒業証書が掲載されていた。
サイト設計はコロンビアのマーケティング企業に外注され、その痕跡まで残っていた。最下部には「米国政府の予算で公的に資金提供された国際メディア組織の制作物である」という控えめな開示があるが、これは暴露された時に、発信元を明かしたと強弁するためのアリバイにすぎない。
問題は、稚拙さそのものが致命傷になったことだ。雑なAIと中途半端な開示のおかげで容易に発見され、その暴露が敵対勢力に格好の攻撃材料を与えた。
発見の報道の翌日(6月3日)、ロシアの偽ニュースのネットワークであるプラウダ・ネットワーク(Pravda)のスペイン語版が早速この記事を転載し、ベネズエラの汎ラテンアメリカ局テレスール(telesur)も6月5日に「ジャーナリズムというよりペンタゴンのプレスリリースだ」と報じた。
米国は、相手が常設の発信基盤を構える目の前で、最良の射撃材料をみずから手渡したのである。