高額不動産所有者の不満
高額不動産所有者の間には李在明政権の不動産政策に対する不満がある。公示価格の引き上げに伴う税負担の増加、多住宅所有者の譲渡所得税の増税、融資規制などに加え、再開発への警戒感もある。政府与党は再開発による住宅供給の増加で価格高騰を抑えたい考えだが、立地が良い市街地の再開発物件は高額で、価格安定どころか価格高騰を招いている物件もある。
もちろん呉市長へのアンチ派もおり、彼の政策について「企業や金持ちを優遇している」と批判する。彼が2期目の2011年に市長を辞任した直接のきっかけは「小中学校の学校給食無償化」だったが、公共工事に対する反発もあった。
ソウル市のブランディングを成功させた呉市長
呉市長は1期目の2006年に「デザインソウル計画」を提唱し、日本統治時代に建設された東大門運動場を撤去して東大門デザインプラザ(DDP)の建設に着手した。東大門競技場跡地から発掘された城壁の遺構を復元したが、設計後の事業予算は当初計画の800億ウォン(約85億円)を大きく上回る2270億ウォン(約240億円)で、最終的に約5000億ウォン(約530億円)まで膨らんだ。建物の坪当たりの建設費を延床面積で割ると著名な建設デザイナーが手がける公共施設の一般的な800〜1000万ウォン(約85万円〜106万円)を大きく上回る1909万ウォン(約202万円)だった。建設はサムスン物産が請け負ったが、設計はイラク出身の英国人建築家ザハ・ハディッド氏で、これだけ高額な設計を韓国と無縁なデザイナーに任せたことにも批判が起きた。
ほかにもソウル市庁舎の建て替えや漢江ルネサンスの名のもとに鷺梁島(ノドゥル島)やセビッ島の整備、盤浦(バンポ)大橋の噴水とライトアップ、水上タクシーなどに多額の建設費を投入した。朴元淳(パク・ウォンスン)元市長が中止した事業もあるが、漢江ルネサンスは呉が市長に返り咲いて以降、形を変えて再開した。
今回の選挙で呉候補が当選した要因の一つに、国民の力の張東赫(チャン・ドンヒョク)代表と距離を置いたことも指摘されている。意見の対立もあったが、朴元市長の自殺に伴って実施された補欠選挙で、共に民主党から出馬した朴映宣(パク・ヨンスン)候補は、国政論争を展開した。しかし市民が求めたのは国政ではなく市政である。今回、野党・国民の力の選挙前の支持率は野党を大きく下回る30%で、呉候補は党と距離を置く選挙戦略を展開、実績を前面に押し出した。