昨年以来、クマに関するニュースがたびたび世間を賑わせている。去る5月22日にも東京・八王子市でクマが目撃され、住宅地近くにまで現れたのかと地域住民を驚かせたばかりだ。

『クマは都心に現れるのか?』

メディアでもセンセーショナルな報道がなされ、人身被害が相次ぐにつれ、「クマが凶暴化した」などの言説が飛び交うようになっている。それらは人々の不安と恐怖感を増大させることになり、「クマを全部駆除すべきだ」などという極論まで出ている。

しかし、『クマは都心に現れるのか?』(小池伸介・著、扶桑社新書)の著者の目に、状況はまったく異なって見えているようだ。

何より、クマは凶暴化などしていない、クマ自身は何も変わっていないのである。変わったのは、人間の側だった。(「まえがき」より)

20年以上にわたり、ツキノワグマの生態を研究してきた人物。環境省や各県の委員としてクマの保護管理に関わり、NGO「日本クマネットワーク」の代表として、人とクマの共存を目指す活動も続けているという。

そんな立場からすると、昨年社会を震撼させた「クマ騒動」は、起こるべくして起こった事態だというのである。

行政における専門職の不在、軽視される科学的知見、継続性のない対策、そして日本人とクマの歴史的関係の特殊性などが複合的に重なった結果、ああいった混乱に至ったということだ。

メディアの報道やSNSなどネット上の情報は、クマのイメージを非常に悪化させており、これからのクマの管理にとって非常に厄介な状況だと感じている。クマは生き物であり、何がわかっていて何がわかっていないのかをしっかり伝える必要がある。一般の人が受ける情報が肥大化し、クマに対するイメージが独り歩きしていく中で、クマという生き物がどういうものなのかを科学的知見から伝えていかなければならない。(61ページより)

「これをすれば100%安全」という正解はない
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