Ann Saphir
[28日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)当局者の間で、インフレが近い将来に落ち着かなければ利上げが必要になる可能性があるとの見方が広がっている。一方で、人工知能(AI)がインフレ抑制を後押しするとの見方には懐疑的な声が目立つようになっている。
こうした状況を踏まえると、6月に開かれるウォーシュFRB議長就任後初の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、かなり激しい議論が交わされると予想される。
セントルイス地区連銀のムサレム総裁は28日、自身の考える「利上げが必要になり得るシナリオ」を示したうえで、「今後1─2四半期でディスインフレが見られなければ、懸念すべき状況になる」と表明。「現時点では、リスクは労働市場よりもインフレ側に傾いているというのが私の見解だ」と述べた。
この発言に先立ち、4月の米インフレ率が過去3年で最も速いペースで上昇したことを示す統計が発表された。
米商務省が28日発表した4月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年比3.8%上昇し、2023年5月以来の大幅な伸びとなった。イラン戦争に伴うエネルギー価格高騰が主な要因だった。
クック理事も27日遅くに同様の見解を示した。現時点では政策金利を現状維持することが正しい判断だとしながらも、関税やイラン戦争、AI関連投資の急増が物価を押し上げているため、必要であれば利上げを行う用意があると語った。
一方、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も、FRBの金融政策は今後の見通しを踏まえると適切な位置にあるとの認識を示し、短期的なインフレ率はしばらく高止まりするとの見通しを示した。ただ、年後半には圧力が和らぐとも述べた。
FRB内でタカ派的な発言が相次いでいることで、ウォーシュ議長は難しい立場に置かれる可能性がある。その大きな理由の一つは、トランプ米大統領が、明確な利下げ期待を込めてウォーシュ氏をFRB議長に選任したからだ。
ウォーシュ氏はここ数カ月、FRBのバランスシート縮小とセットであれば利下げを支持し得るとの考えを示してきた。また、AIがインフレを押し下げるとの見方も示しており、これも低金利を支持しやすい発想につながる。
しかし、イランとの戦争開始以降、ガソリンや燃料価格が大きく上昇したことで、FRB当局者の間では、エネルギー高が関税由来の物価圧力に重なり、より広範なインフレに波及するのではないかとの議論が活発化している。そうなれば、金融市場が現在かなり織り込み始めている利上げが必要になる可能性がある。
先月のFOMCでは、19人の政策担当者のうち少なくとも6人が、会合後の声明から「次の一手は利下げが最も可能性が高い」と受け取れる文言を削除すべきだと考えていた。代わりに、利上げも同程度にあり得ると示唆すべきだという立場だ。
ムサレム氏は28日、自身もその一人だったと明らかにした。さらに「インフレ率がFRBの望む目標値に収束しないリスクがあると見ている」とも述べた。
さらに、ムサレム氏ほか複数の当局者が、AI向けの半導体投資やデータセンター投資の急増は、むしろ事態を悪化させる可能性があるとの主張を展開している。これはウォーシュ氏の見解に対するもう一つの反論となっている。
クック氏も、AI関連支出が新たなインフレ・ショックを積み増す可能性があるとみている。
シカゴ連銀のグールズビー総裁はさらに踏み込み、AI主導の生産性向上が広く期待されるようになれば、それ自体がインフレを押し上げかねないと論じている。将来の豊かさへの期待から消費者が今のうちに支出を増やせば、景気の過熱を抑えるために中央銀行は利上げで対応せざるを得なくなると指摘した。
ウィリアムズ氏もこの可能性に言及した。ただ、人々が生産性上昇の加速をどこまで的確に理解できるのかについては、あまり確信が持てない様子だった。その発言からは、AIのインフレ抑制効果に関する議論が最終的にどのような結論に至るのかは明確には分からなかったが、ウィリアムズ氏自身も他の当局者と同様、その答えを見つけようと深く取り組んでいることがうかがえる。