Miho Uranaka Sam Nussey
[東京 28日 ロイター] - 官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)が半導体材料大手のJSR(東京・港区)の売却を検討していることが分かった。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。関係者らによると、富士フイルムホールディングスと三菱ケミカルグループが買収に関心を示している。
JICは2年前、9000億円規模でJSRを買収。当時はJSRを中核とした業界再編に意欲を示していたが、関係者の1人によると、半導体関連企業に対する市場評価の高まりを追い風に投資回収を探っているという。
JICと三菱ケミカルはコメントを控えるとし、富士フイルムは「本件に関してお話できることはない」と述べた。JSRからはコメントを得られていない。
AI(人工知能)投資ブームを背景に、半導体サプライチェーン企業のバリュエーション(投資価値評価)は上昇している。同業で大手メーカーの東京応化工業の株価はこの1年で約3倍に上昇し、時価総額は1兆4100億円に達している。
JSRは半導体の製造工程で使われる主要材料「フォトレジスト」の大手メーカー。富士フイルムもフォトレジストを製造しており、三菱ケミカルもフォトレジスト材料を手掛ける。
JSRは非公開化した当時、半導体素材分野で強みを持つ日本企業は規模が小さく、このままでは国際競争力を失いかねないとの危機感から、半導体材料分野での再編や戦略的M&A(合併・買収)を機動的に進める狙いがあると説明していた。非上場化後は、JICと連携して業界再編を主導していく方針も示していた。
こうした構想を巡っては、JSRが半導体材料業界の再編を実際に主導できるのか懐疑的な見方もあり、業界内で賛否を呼んでいた。
一方で、非上場化した後のJSRは、ライフサイエンス事業の不振で25年3月期に赤字計上を余儀なくされた。堀哲朗社長は、最高財務責任者(CFO)だった昨年3月のロイターとのインタビューで、まずは業績の立て直しが最優先として、現時点では他社の買収を行う段階にはないと述べていた。26年3月期には黒字に転換している。今回の売却が実現すれば、再編機運が再び高まる可能性がある。
富士フイルムの株価は、この報道を受けて上げ幅を拡大し、3%高で取引を終えた。三菱ケミカルグループ株は下げを取り戻し、前日比ほぼ横ばいで引けた。
JICは2018年に設立された経済産業省所管の官民ファンドで、産業競争力強化法に基づき、オープンイノベーションの促進や産業競争力の強化を目的に投資を行っている。
(浦中美穂、Sam Nussey 編集:岡坂健太郎)