中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は20日の首脳会談で、両国の「包括的パートナーシップ」の進展を称賛する一方、トランプ米大統領が掲げる最新鋭​のミサイル防衛システム「ゴールデ‌ン・ドーム」の構想が戦略的安定を脅かしていると非難した。

しかしながら、ロシアから中国に天然ガスを供給する新パイプライン「シベリアの力2」については完全な合意には至らなかった。

習氏は北京でトランプ氏を出迎えたわずか数日後、プーチン氏を同じような形で歓迎した。人民大会堂では儀仗隊による警護と礼砲を鳴らし、子どもたちが中国とロシアの国旗を振って出迎えた。

◎中ロ関係の変遷

故毛沢東元国家主席が建国した中華人民共和国は、世界の共産主義勢力の中で当時は絶対的な指導的地位にあった旧ソビエト連邦の同盟国かつ従属的なパートナーとなった。

西側諸国、特に米国に対する敵対意識を共有しているにもかかわらず、旧ソ連と中国の関係は悪化し、1961年の中ソ対立へと至った。ところが1991年に旧ソ連が崩壊すると、後継のロシアと中国は友好関係を再構築した。

それ以来中国が世界屈指の経済大国かつ技術的なリーダーとして台頭するにつれ、両国の勢力バランスは中国にとって有利に傾いた。

2022年にウクライナへ侵攻したロシアは、経済面で中国への依存度を高めている。

ロシアの統計によると、対中国貿易額は2400億ドル程度に達し、ロシアにとって圧倒的に最大の貿易相手国となっている。

中国は、ロシア産原油の最大の購入国でもある。ロシア大統領府によると、中国の貿易額としては首位の米国、2位の日本、3位の韓国、4位のベトナムに次いでロシアは5番目。

トランプ氏は、過去の米政権がロシアと中国の連携を許したことは重大な過ちだったと訴えた。

◎トランプ氏とプーチン氏の訪中成果の比較

習氏が1週間の間にトランプ氏とプーチン氏の両方を迎えたことは、習氏および2012年から習氏がトップに君臨する中国の影響力の大きさを浮き彫りにしている。

ロシア大統領府は、儀礼的な側面よりも両方の訪問の内容に注目することが重要だと指摘。その上で、表面に見えるものだけが全てではないと言及した。

トランプ氏は訪問中の2日間にわたって習氏を称賛し続けたにもかかわらず、貿易面での大きな進展も、イランでの戦闘終結に向けた中国からの具体的な支援も得られないまま15日に北京を後にした。

他方でプーチン氏と習氏は会談後、核安全保障、台湾、さらにはアムールトラ、ジャイアントパンダ、霊長類のキンシコウなどにも言及した9935語に及ぶ共同声明と、より短い共同宣言に署名。衛生基準や国営メディア、原子力エネルギーといったさらに20件の文書にも調印した。

ウクライナ侵攻に対する西側諸国の制裁によってロシアが外国の先進的なハードウエアを入手できなくなっている中、ロシア銀行最大手ズベルバンクのゲルマン・グレフ最高経営責任者(CEO)は同社の対話型AIモデル「ギガチャット」を中国製半導体で稼働させたいとの意向を示した。

◎ロシア・中国間の新パイプライが進展する可能性

ロシアは、シベリアの力2について、大筋の合意に達したと表明している。ただ、詳細やスケジュールについては両国で合意することが必要だとした。

北シベリアの天然ガス産出地帯からモンゴルを経由し、中国へガスを輸送するシベリアの力2について、中国とロシアは価格設定や他の問題の解決が見通せない中で長年にわたって協議を続けてきた。

◎プーチン氏と習氏はトランプ氏を批判したか

ロシアと中国は共同声明の中で、植民地時代の精神に基づいて国際情勢を支配しようとする一部の国の試みは失敗に終わったものの、世界は「弱肉強食の法則」への回帰の危機に瀕していると訴えた。

またトランプ氏のゴールデン・ドーム構想は戦略的安定を脅かすものであり、画期的な核軍縮条約の後継案に取り組まなかった米国の対応は無責任だったと批判した。

[ロイター]
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