Shariq Khan Mohi Narayan Trixie Yap

[ニューヨーク 18日 ロイター] - インドで調理用ガスが不足し、米西部カリフォルニア州ではガソリン価格が1ガロン当たり6ドル(約954円)に達している。いずれも史上最悪ともいわれるエネルギー供給混乱の表れだ。両者は直接結びついており、米国とイスラエルによる対イラン戦争が世界経済全体に連鎖的な影響を及ぼしていることを示している。

イランが要衝ホルムズ海峡を事実上封鎖したことで、石油の供給網は混乱に陥り、各国は備蓄の取り崩しなど燃料不足への対応に追われている。ただ、その対応策の一部が、かえって影響を広げている。

人口が世界最多のインドでは、液化石油ガス(LPG)が主要な調理用燃料となっている。イランを巡る戦争前にはLPG輸入の9割超を中東に依存していた。しかし供給が制約されたため、インド政府は国内精製業者にLPGの生産を最大化するよう指示。その結果、精製業者はLPGを原料とする自動車燃料添加剤「アルキレート」の生産を減らしている。

これが、カリフォルニア州でガソリンを巡る懸念を一段と強めている。同州では、中東産原油の調達が難しくなったアジアの精製業者からの輸入が減少し、ガソリンの供給不足への警戒感が高まっている。そこにアルキレートの供給減が重なり、ドライバーは「二重の打撃」を受けている。

アルキレートは燃焼時の排出が他の添加剤より少ないとされる。このため、独自の低公害ガソリン規格を採用するカリフォルニア州では特に需要が強い。

米石油協会(API)のメイソン・ハミルトン首席エコノミストは「ホルムズ海峡の封鎖によってインドのLPG供給が制約を受け、インドの精製業者はアルキレートの生産・輸出を減らしている。その結果、すでに逼迫しているカリフォルニア州のガソリン市場にさらなる圧力がかかっている」と指摘する。

<インド、調理用燃料を優先>

燃料価格情報サービスの米ガスバディのアナリスト、パトリック・デハーン氏によると、インドの精製業者によるアルキレート輸出削減は、カリフォルニア州にとって最悪のタイミングで起きた。同州ではすでに、イランを巡る戦争に起因する世界的な燃料供給危機を背景に、ガソリン価格が2022年以来の高水準となっている。夏のドライブシーズンで需要が高まれば、アルキレート不足で価格がさらに押し上げられる可能性が高いという。

デハーン氏は「アルキレート不足が深刻化すればするほど、カリフォルニアで価格上昇圧力は強まる」と危機感を示した。

カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)の広報担当者は、インドの政策動向を認識しているとしつつ、同州はガソリンと混合用原料の供給が潤沢であり、短期的な不足は見込んでいないと述べた。状況は注視しているという。

ガスバディのデータによると、カリフォルニア州のガソリン平均小売価格は7日には1ガロン当たり6.16ドルと、3年超ぶりの高値を記録した。15日は同6.14ドルだった。デハーン氏によると、州のガソリン在庫は記録的な低水準に近く、価格は今後数週間で同6.50ドルを超える可能性もある。

米国では、ガソリン利用がピークとなる夏季の大気汚染を抑えるため、よりクリーンな燃料の使用が法令で義務付けられており、これが価格の押し上げ要因となっている。中でもカリフォルニア州は全米で最も厳しい基準を課しており、他州より価格が高い。ガスバディのデータによると、15日の全米平均のガソリン価格は1ガロン当たり4.52ドルだった。

一方、インドはアルキレートの輸出を続ける余裕がほとんどない。LPG不足は深刻で、家庭では長時間並んでもガスボンベが購入できず、やむなく闇市場に頼るケースが増えている。レストランなどの事業者からは営業継続が困難になるとの声も上がっている。

グジャラート州ジャムナガルで世界最大の製油所を運営するリライアンスは今月、LPG生産を最大化するため、アルキレートの生産・輸出削減に踏み切ると発表した。調査会社ケプラーによると、インドのアルキレート輸出は4月に日量3万3000バレルと、3月の同6万1000バレルからほぼ半減し、23年10月以来の低水準となった。

<有効な対策乏しく>

インド政府と同様に、カリフォルニア州のニューサム知事も、戦闘が長引く中でガソリン価格の上昇を抑える有効な手段は限られている。

ガソリン税の一時免除などの価格抑制策も選択肢となり得るが、需要を刺激してしまい、かえってアルキレート不足を悪化させ、一段の価格高騰を招く恐れがあるとデハーン氏は指摘する。同氏は「すでに限界に近い状態の市場に、さらに負荷をかけることはできない」と話す。

こうした中でニューサム氏が取る可能性がある現実的な選択肢は、アルキレートの使用量を減らすために州独自の燃料規格を一時的に緩和することくらいだとの見方もある。「ニューサム氏は打つ手が限られている。規格緩和が唯一の選択肢だ」とデハーン氏は言う。

ただ、CECの広報担当者は、ガソリンの添加物混合規則の緩和が必ずしも有効とは考えていないとしている。

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