Ankur Banerjee Samuel Shen
[シンガポール 18日 ロイター] - 米中首脳会談で「戦略的安定」に重点が置かれたことで、中国市場にとって両国間の地政学的リスクは和らぎそうだ。ただ貿易とイランでの戦争を巡っては進展が乏しかったため、市場の好感ムードは盛り上がらなかった。
2017年以来初となったトランプ米大統領の訪中は、貿易面で大きな進展が見られず、米国・イスラエルとイランとの戦争終結に向けて中国から具体的な力添えもなかった。
投資家は首脳会談に限定的な希望しか抱いていなかったものの、エネルギー価格高騰を招いた戦争の終結に向けた道筋が開かれることには期待していた。
週明け18日の市場で中国人民元はドルに対して約2週間ぶりの安値に下落した。投資家の注目が首脳会談から反れ、インフレ懸念と中東の緊張再燃を背景とした世界的な債券安へと移ったからだ。
世界的なリスクオフムードを反映して中国株は15日に1%余り下げた後、18日はほぼ横ばいで推移した。
BNPパリバのアジア太平洋キャッシュ株式調査責任者、ウィリアム・ブラットン氏は、米中首脳会談が株価に直ちに恩恵をもたらす可能性は小さいが、地政学的リスクの低減という意味で、長期的な影響はプラスだとみている。
「投資家のリスク認識を変え、投資機会として比較的魅力の高い中国へと、米国資本を再び向かわせる可能性がある」と同氏は指摘。「年初から米国投資家は徐々に中国株に対して前向きに転じており、米中関係の予見可能性が高まる中、この傾向は続くだろう」と語った。
18日の市場が首脳会談にあまり反応しなかったのは、4月の中国の鉱工業生産と小売売上高がいずれも予想を大幅に下回り、景気減速が示されたことも要因だ。
キャピタル・エコノミクスのアナリストらによると、楽観論に立てば、首脳会談は事態の打開こそもたらさなかったが、貿易戦争の休戦を確実にし、短期的な再燃リスクの低下に寄与した。
「トランプ氏が習近平国家主席を9月に米国に招待したという事実も、両国が今後数カ月間友好的に振る舞う確率を高めた」という。
<管理されたライバル>
投資家は、首脳会談が中東の和平合意に向けた道を開く助けになる可能性に期待していた。しかし、イラン産原油の最大の買い手である中国が、紛争に関与するという明確な姿勢を示さなかったため、市場は新たな混乱を警戒している。
アナリストによると、イランでの戦争とホルムズ海峡をめぐる米中の対照的な姿勢によって、両国間の地政学的な相違が浮き彫りになった。
トランプ氏は、イランは海峡を再開しなければならないという点に習氏が合意したと述べたが、習氏はトランプ氏とのイランに関する協議についてコメントしなかった。中国外務省は、紛争は「決して起こるべきではなく、継続する理由もない」と表明した。
サクソのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は、貿易、台湾、あるいはイラン紛争について今後明確な進展がなければ、今回の会談は「中身のないイベント」と見なされるリスクがあると指摘。市場心理にはプラスだが、市場の土台を変えるには不十分だと話す。
同氏は「投資家は、イラン紛争によって原油価格が高止まりし、インフレ期待が根強く残り、債券利回りが高止まりする可能性を過小評価しているかもしれない」と述べた。
一方、習氏がトランプ氏に対し、台湾の扱いを誤れば二大国間の衝突につながりかねないと伝えたことで、アナリストは台湾が今後も米中関係における重大な要因であり続けるとみている。
スイスのプライベートバンク、EFGインターナショナルのエコノミスト、サム・ヨヒム氏は、トランプ氏が140億ドル(約2兆2248億円)規模の台湾への武器売却を承認するかどうかが重要になると指摘。「承認すれば、習氏との関係が不安定化する恐れがある」と語った。
トランプ氏は15日、台湾への武器売却を承認するかどうかまだ決めていないと述べた。
米中間の「貿易休戦」は今年後半に期限切れを迎える予定だが、首脳会談で関税に関して明確な結論が示されなかったことが投資家心理を圧迫している。
最大の成果とされた中国によるボーイング機の購入合意でさえ、投資家の失望を買った。200機という規模がアナリストの予想を大きく下回ったためで、同社の株価は下落した。
貿易面での進展は限定的だったものの、野村證券のチーフ中国エコノミスト、ルー・ティン氏は、首脳会談を「経済的および政治的リスク抑制」の試みだと評し、両首脳に短期的な安定をもたらしたと言う。
ルー氏は「26年の残りの期間、二大大国はライバルであり続けるかもしれないが、少なくとも予測可能で取引可能な、緊密に管理されたライバルの関係を選んだ」と述べた。