Howard Schneider

[アメリア島(米フロリダ州) 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ次期議長がFRBの保有資産(バランスシート)の縮小を掲げていることについて、元FRB当局者らが18日の会合で疑義を投げかけた。その上で保有資産縮小に力を入れるよりも、将来の金融・経済ショックへの対応に活用する指針に重点を置くべきだと訴えた。

この会合はアトランタ地区連銀が開催した。FRBの保有資産は6兆7000億ドル規模で、その大部分は米国債と住宅ローン担保証券(MBS)が占めている。一部の議員はFRBが金融市場に介入する証拠になっていると批判し、ウォーシュ氏は公約しているFRBの「体制転換」の中核として保有資産を縮小するとした。

しかし、現在の保有資産はピークに達した3年前より約2兆ドル減っている。2012―14年のFRB理事在任中に量的緩和策を経験したジェレミー・スタイン米ハーバード大教授(経済学)は、保有資産縮小の経済や市場への影響が、保有資産の構成を長期証券から短期国債へシフトさせることよりも小さいと訴えた。

スタイン氏は「保有資産の規模は、ある種の政治的な見せ物になっている」とし、「ウォーシュ氏はいくらかの進展を示すためだけに、縮小せざるを得ない立場にやや追い込まれている。その点から議論をそらせるかどうかが、ウォーシュ氏のコミュニケーション能力の試金石になる」と指摘した。

ウォーシュ氏は06―11年にFRB理事を務めた。前シカゴ地区連銀総裁のチャールズ・エバンス氏は、就任当初の07年にはFRBの保有資産が8000億ドル程度にとどまっていたとして「8000億ドルという『古き良き時代』を懐かしむのは完全に非現実的だ」とし、その根拠として現在のFRBの保有資産は銀行の流動性のニーズと密接に結び付いており、短期金利を管理するための手段でもあることを挙げた。

25年の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記事でウォーシュ氏がFRBの保有資産を最大で2兆5000億ドル程度まで縮小できる可能性があると示唆していたことに、エバンス氏は「私は懐疑的だ」と強調。保有資産縮小のための規制上の案などは「野心的で、大がかりで、まるで(第2次世界大戦中に米政府が科学者を総動員して原爆を開発した大規模プロジェクトの)マンハッタン計画のような取り組みだ」との見解を示した。

FRBの保有資産は、銀行の準備金需要に応える形で再び緩やかに拡大している。このことは短期金利が上昇し、銀行の準備金が逼迫しつつあることが示唆された昨年秋に浮き彫りになった。

元FRB理事で、シカゴ大ブース経営大学院のランドール・クロスナー教授(経済学)は、ウォーシュ氏やFRBにとっての今後のより広範な課題は何を購入し、なぜ購入するのかという原則を定め、それを市場や議員、一般市民に伝える方法を見いだすことだと指摘する。

英イングランド銀行(中央銀行)の金融行政委員会の委員であるクロスナー氏は、英中銀が22年に国債市場の危機を鎮静化させることに成功したのは、政策当局者が債券購入は市場の機能を維持するためのものであり、短期間で終了することを明確にしていたためだと紹介した。

一方でFRBは資産購入の目的に不透明な面があったため、保有資産を巡る論議を呼ぶことになったとの見解を示した。一例として新型コロナウイルス禍での資産購入は国債市場の機能を適切に維持するために再開されたものの、その後は経済支援という金融政策の目的も帯びるようになり、住宅市場が安定してかなり経過した後も購入対象にMBSが含まれていた。

クロスナー氏は「(FRBが)信じられないほどの勢いで介入し、大量の国債を購入したという点では正しいことをした」としつつ、「その後もペースを緩めることが非常に困難になった。なぜならばFRBは自らの行動について明確に説明しなかったからだ」と問題点を挙げた。

その上で「FRBは金融政策を後退させていると受け取られることを望まなかった」とし、「事前に方針を明確に示す方が、はるかに良いと思う」との考えを示した。

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