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[東京 18日 ロイター] - アサヒグループホールディングス傘下のニッカウヰスキーは、日本産ウイスキーの人気が続くことを見越し、発祥の地・余市蒸溜所(北海道余市町)の貯蔵能力を増強する。供給能力の拡充とブランド力の強化を図り、将来的にはプレミアムウイスキー市場で世界トップ10入りを目指す。小野直人社長がロイターのインタビューに語った。

余市蒸溜所は、創業者で「日本のウイスキーの父」とも呼ばれる竹鶴政孝氏が1934年に設立した。今回は約70億円を投資し、7月には新たな製樽棟が完成する。貯蔵庫の建設にも着工し、同蒸溜所での原酒の貯蔵能力は2019年比で約3割増える。小野社長は「ウイスキーは寝かせなければならず、今つくったものがすぐに世の中に出るわけではない」とした上で、「未来を見据えて今、大きな投資を進めているという位置づけだ」と語った。

日本産ウイスキーは2008年ごろから国際的な賞を相次いで受賞し、世界的に需要が急増。15年ごろには供給が追いつかず在庫が底をつく状況となった。特にニッカの売上高は、竹鶴氏がモデルとなったNHK連続テレビ小説「マッサン」が14―15年に放送された後、大きく伸びた。13年の273億円から14年に341億円、15年には470億円と急増した。コロナ禍中は減少したが、ここ数年は訪日客の増加などを背景に10%台の伸びが続き、24年は597億円だった。34年に売上高1000億円以上、40年以降に2000億円超を目指す。

サントリーなど競合各社が生産能力増強に動く中、供給過剰リスクも指摘される。小野社長は、米関税や中東情勢、戦争といった予測困難な環境変化が起こり得るため、長期的な需要を正確に見積もるのは難しいとしながらも「一喜一憂せず、短期的な利益に走るのではなく、マクロ影響にとらわれないブランド、ウイスキーの文化をしっかりと作っていくことが純粋に大事だと思っている」と語った。

その一環で、創業者の名を冠した「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ」を30年までの5年間、数量限定で毎年発売する。今年は6月発売で、国内外でそれぞれ1万本を割り当てる。また、7月には東京・南青山に旗艦バーを開業、余市に新設する製樽棟は見学できるよう設計しており、海外からの来訪にも期待する。

小野社長は、日本で自社ウイスキーを知った訪日客が帰国後も購入できる環境を整えることが重要との考えを示した。ニッカ製品は昨年時点で65以上の国・地域で販売され、販売数量では米国が最大でフランス、韓国が続く。今後は香港、台湾も含む東アジアを強化する。「日本のウイスキーの品質やおいしさを、地理的に身近な方々にも評価いただきたい」という。米関税の影響は限定的だとするが、地政学的観点からも輸出先を多様化し「エリア・ポートフォリオ」を広げたい考えだ。

小野社長は「日本は島国でいろんな自然があって、東京のような大都市もあり、そういった日本の魅力全般が日本のウイスキーの後押しにもなっている」とみる。「日本のウイスキーは世界でまだまだ小さいし、ニッカのブランドもシェアは小さい。竹鶴政孝が作ったこのブランドを世界の人々に知ってもらうことで、世界の人々が日本という国にも興味を持ってもらいたいと思う。そのためにも、現在地は40番くらいだが志としてやはりグローバルトップ10には入りたい」

*インタビューは15日に実施しました。

(岡坂健太郎 編集:久保信博)

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