ALEXANDRA SARABIA Maria Tsvetkova
[カンザスシティー(米ミズーリ州) 11日 ロイター] - その長い歴史の中で、カンザスシティーは商人やギャング、ジャズの巨匠にバーベキューの名人、そしてポップスターのテイラー・スウィフトまで、あらゆる人々を引き寄せてきた。今夏、この街はさらに新たな顔ぶれを迎える。世界最高峰のサッカー選手たちと、その熱狂的なファンたちだ。
6月11日から7月19日にかけて開催されるFIFAワールドカップ(W杯)で、カンザスシティーは米国内11の開催都市の中で最も小さい。それでも、アルゼンチン、イングランド、オランダという強豪3カ国が、そろってこの街をベースキャンプに選んだ。
英国のタブロイド紙が「WAGs(ワグズ)」と呼ぶ、ブランドファッションに身を包んだ選手の妻やガールフレンドたちも大挙して訪れる見通しだ。前回のカタール大会ではクルーズ船に宿泊した彼女たちにとって、中西部の街の雰囲気は新鮮に映るかもしれない。
米国でW杯が開催された前回の1994年大会では、カンザスシティーは開催都市の座を逃した。以来、サッカーはこの街に着実に根を下ろし、現在は世界水準の練習施設を複数擁するまでになった。他都市との移動時間を抑えたいチームにとって、米中部に位置するこの街は地理的にも好条件だ。
地元では「KC」の愛称で親しまれるカンザスシティーは、2本の川の合流点に位置し、その都市圏はミズーリ州とカンザス州にまたがっている。知名度と人口でまさるミズーリ州側では、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のカンザスシティー・チーフスの本拠地アローヘッド・スタジアムで準々決勝を含む6試合が開催される。前回優勝したアルゼンチンはより静かなカンザス州側で練習し、イングランド代表チームはその近くのホテルに滞在する予定だ。
この地域にはニューヨークのようなナイトライフや、ロサンゼルスのような食文化、マイアミのようなビーチはないかもしれないが、地元の人々は訪れる人々がきっと良い意味で驚いてくれると期待している。
多くの人が、アーサー・ブライアンツ(Arthur Bryant)やジョーズ・カンザスシティ・バーベキュー(Joe's Kansas City Bar-B-Que)といった市内の有名なバーベキュー店で、ブリスケットの「バーントエンド」や燻製ポークを求めて行列を作るだろう。ジョーズ・カンザスシティ・バーベキューは、米国の有名シェフ故アンソニー・ボーデイン氏が「死ぬまでに食べるべき13の場所」に選んだガソリンスタンド併設のレストランだ。
音楽ファンは、歴史的な18番街とバイン地区にあるブルー・ルーム(The Blue Room)でジャズのジャムセッションを楽しみ、映画ファンはドライブがてら黄色いレンガ道をたどって、カンザス州の小さな町ワメゴにあるオズ博物館(Oz Museum)に行ける。
「ミッドウェストと聞けば、道を牛が歩いているようなイメージを持って来る人も多い」と、カンザスシティーホスト委員会副委員長であるジェイク・リード氏は話す。「でも、アートや文化のシーンが本当に充実しており、街の人たちは温かく迎えてくれる」
<テイラー・スウィフト効果>
カンザスシティーといえば、アメリカンフットボールで有名だ。地元の人気チーム、チーフスは近年、スーパーボウルを3度制し、攻撃の要である人気選手トラビス・ケルシーさんが、ポップ界のスーパースター、テイラー・スウィフトさんと婚約している。
一方でこの街は「米国のサッカーの都」としての地位確立も目指してきた。男子プロチームのスポルティング・カンザスシティーと女子プロチームのKCカレントが活躍しており、この15年間で最先端の練習施設やスタジアムに数億ドル規模の投資を行ってきた。
カレントの広報担当副社長、ダニ・ウェルニアック氏は、スウィフトさんが街の知名度向上に一役買っていると語る。「彼女が、この街のスポーツ界の一員であることは嬉しい。W杯の試合にも姿を見せてくれると期待している。大きな見せ場になるはずだ」と述べた。
「W杯で一度も優勝したことのない最強チーム」として広く知られるオランダ代表は、カレントのトレーニング施設で練習する。オランダ代表のロナルド・クーマン監督は4月、施設を視察した際に「最良の選択肢」だと判断したと語っていた。
カレントのフォワード、カイラ・カルーサさんは「カンザスシティーのスポーツ文化は人を引き込む力がある。熱気があって、街中どこにでもある」と話す。
<覚悟して来て>
アルゼンチンは今年2月、都市間の距離や施設環境を理由にカンザスシティーをベースキャンプとすることを最初に表明したチームとなった。最後のW杯出場になる可能性が高いスーパースター、リオネル・メッシらの連覇に向けた闘いの初戦は、6月16日にアローヘッド・スタジアムで行われるアルジェリア戦だ。
イングランドは当地での試合がないが、スポルティング・カンザスシティーがかつて使用していたスウォープ・サッカー・ビレッジで練習し、グループステージの3試合のためにダラス、ニューヨーク、ボストンへ飛行機で移動する。
前出のリード氏は、ニューヨークやロサンゼルスを拠点とするチームは「もう少し慌ただしくなるし、追いかけ回される機会も増えるだろう」と指摘する。一方カンザスシティーは「ホームにいるような感覚になれる場所だ」と語った。
カンザスシティーの公式非営利プロモーション機関ビジットKCによると、W杯期間中に約65万人が同市を訪れると見込まれている。ただし、米国ホテル宿泊業協会が5月上旬に発表したリポートによると、ホテルの予約状況は現時点で当初の期待を下回っているという。
ジョーズ・カンザスシティ・バーベキューの常連客、カミラ・トーマスさん(29)は、これから街に訪れる人々に「覚悟して来て」と呼びかける。ちょうどその時、サーバーがポークスペアリブの受け取りを告げた。皿からはみ出しそうなほどたっぷりの量だ。「欧州の人が慣れているよりも、ずっと量が多いはずよ」