中国の中山大学海洋科学学院は、海南島南東沖の南シナ海、水深約1600メートルの海底に牛の死骸を置く実験を行った。クジラの死骸が深海に沈んで生態系の一時的な拠点となる「鯨骨生物群集」に近い状況を人工的に再現し、深海で大型の有機物がどのように利用されるかを調べるためだ。
しかし、牛の遺体とともに沈められたカメラには8匹もの「予想外の生物」が捉えられていた。
その正体はオンデンザメだ。今回牛の死骸に寄ってきたオンデンザメの大きさは、小さいものであれば1.3メートル、最大のもので5.1メートルに及んだ。
75年以上は生きると言われているオンデンザメは本来、北太平洋、日本やベーリング海からアラスカ湾、バハ・カリフォルニア半島に至る海域に生息していることが確認されてきたが、南シナ海に生息しているという決定的な記録は存在していなかった。
研究者は、餌を奪い合うわけではなく、順番待ちをしながらの摂食行動に注目している。大型個体は死骸に直接近づいて肉を引き裂く一方、2.7メートル未満の小型個体は周囲を慎重に回る傾向があったという。さらに、後方から近づく個体に前の個体が場所を譲るような動きも記録された。
研究チームの田翰(ティエン・ハン)はこのような行動について米オンライン科学ニュース配信プラットフォーム『ユーレックアラート』に対し、「深海環境においても、採餌の優先順位が個体ごとの競争力の強さによって決まることを示している。オンデンザメが単独ではなく複数個体で採餌する際に適した生存戦略を反映している」と説明している。
中山大学は、南シナ海でオンデンザメが発見されたことは、生態学的に非常に重要な意味を持つと指摘。この発見は、この種の既知の分布域を拡大するだけでなく、南シナ海と北西太平洋大陸棚域を結ぶ、これまであまり認識されていなかった冷水回遊回廊(極低温環境に依存する大型深海生物の地域間移動にとって重要な経路)をオンデンザメが支配している可能性を示唆しているとした。
【参考文献】
Tian, H.; Zhong, J.; Chen, J.; Jiang, Y.; Zhang, J.; Xie, W.; Gao, Z.; Wang, Y.; Liu, H.; Wang, S.; et al. Southwestward Expansion of the Pacific Sleeper Shark’s (Somniosus pacificus) Known Distribution into the South China Sea. Animals 2024, 14, 2162.
Han Tian. Predating Behavior of the Pacific Sleeper Shark in the Deep Waters of South China Sea. Ocean-Land-Atmos Res. 2025;4:0095.DOI:10.34133/olar.0095
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