「グエー死んだンゴ」関連投稿で話題に

大隅 そういったことは私もずっと意識していて、今もっとも盛んなコミュニケーション手段であるSNSを利用しないと私たちの活動は広がらない、何とか始めてみようという議論をしていたときに、あるきっかけで私たちの財団がSNSで話題になりました。

インフルエンサーの方がXで「がん研究への寄付の輪が広がっているが、国による支援がされにくい基礎研究に助成している大隅基礎科学創成財団も応援していただけたら」と紹介してくださったんです。

 昨年10月に希少がんで亡くなった北海道大学の学生がXの予約投稿機能を使って死後に「グエー死んだンゴ」とネットスラングで投稿したことで、若い世代を中心にがん研究機関へ寄付する輪が広がりました。

その後、がん研究だけでなく基礎研究も支援しようというムーブに発展したのですが、財団の名前やURLをあげて紹介する方がいらしたのですね。

財団のXには10月29日に

 寄付件数が400件を超えていました。 きっかけとなった中山君の記事を読み返すたび、同じ親として胸が詰まります。その想いを、科学の発展につなげることでお悔やみにかえたいです。大隅理事長にも、皆さまのコメントと中山君のことをお伝えしました。 心より「成仏してクレメンス」と申し上げます。

という投稿が見られます。

最近のSNS文化では、知ってもらえれば一気に広まる側面があります。財団と聞くと、若者にとって初めは「権威のある人が集まっている集団」と馴染みが薄いイメージかもしれません。でも、今は「推し活」っていう「好きなものに深くかかわって応援したい」という文化がありますよね。「こんな面白い研究があるんだ」と知ることで「自分の推し研究」を応援してくれる可能性は大いにあると思います。

クラウドファンディングの対象に「デンキウナギ」と「植物の生存戦略」が選ばれた理由はあるのでしょうか。

「基礎科学って面白い」を広げるために

大隅 私たちは公益財団なので、活動は色々な意味で公益性が問われ、言えないこともあります。言えることは、私たちの財団の活動の大事な柱は、基礎研究をやっていて、役に立つか立たないかという評価のされ方がネックになって研究資金に恵まれない人たちの底上げをしたいということです。

10年間、毎年6000万円ほどの助成を行って、それは非常に感謝されているし、色々な研究のきっかけにもなっています。ただ、私たちの財団の資金では、何百人、何千人に支援するわけにはいかないので、毎年10数人なんです。

 それでも、10年で100人超の基礎研究者が助けられているってすごいですよね。

大隅 今回、クラウドファンディングでこの人たちを財団が支援する理由というのは皆さんから見えないかもしれませんが、「基礎科学って面白いね」というメッセージを出せるように気を配っています。

今まで、単に財団の基礎研究助成に力を貸してくださいと言っても、なかなか皆さんに納得していただくのは難しいということがありました。なので「こういう研究が、とても面白い基礎研究なんだよ」とダイレクトに皆さんに伝える機会として、クラウドファンディングというかたちをとってみようと思い、今年初めてチャレンジをすることになりました。

「ある1人の研究者が、どういう思いで研究をやりたいということをみんなにアピールして研究資金を募集する」という活動が、財団の今までの活動とは違った方法としてありうるのかなと期待しています。

それが今年2人の研究の支援をクラウドファンディングで呼びかけたきっかけなのですが、これまでに研究支援をした人の中にも、「これは役に立つの?」という研究だけれど面白いことはたくさんあります。たとえば、動物の性の決定や女王蜂の生態の研究です。

これまで研究費が取りづらかった人たちが、財団を通じてクラウドファンディングをやれるシステムができたらいいなと思っています。ただ、今後も続けられるかは今回どれくらい成功するかにかかっているので、あと1週間、最後の追い上げで頑張れればと思っています。

面白い研究をたくさんの若者に見てほしい
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