世界で進む「脱アメリカ」
たとえ次の大統領がもっと穏健な人物であっても、アメリカが世界秩序の制度的支柱としての役割を果たし続けるのは難しい。無条件の集団防衛という同盟国との約束を破り、G7を分断し、世界銀行とIMFを弱体化させた責任は重い。それに欧州の指導者たちは、いつかまたトランプのような人物が大統領に選ばれるリスクも計算に入れている。
現に欧州諸国は貿易と安全保障の両面で、アメリカ抜きの新たな協定や条約を次々と結んでいる。こうした既成事実が積み重なれば、米欧間の亀裂の修復はますます難しくなる。将来的にアメリカが再び欧州重視に転じたとしても、脱アメリカの流れは止まらないだろう。
要約すればこうだ。20世紀における3度のエネルギー危機で強化された米欧主導の国際秩序は、21世紀における最初のエネルギー危機で解体されようとしている。その後に何が来るかは、まだ分からない。もしもイランと中国が勝者なら、少なくとも短期的には、国家主導の専制的重商主義の時代が来て、アメリカ抜きの(そして軍事色の強い)政治・経済同盟があちこちに誕生するだろう。
民族も国境も超えたグローバルな金権腐敗政治のシステムが出来上がる可能性もある。だが(可能性は低そうだが)別の展開もあり得る。新たな、国境を超えた民主的モデルの出現だ。資本家よりも働く者の利益を優先し、コスト最優先ではないサプライチェーンを確立し、経済政策において地球環境の持続可能性を重視するような社会モデルだ。
イラン戦争による今回の石油危機は、20世紀後半の3度の石油危機によって強化された米欧主導の国際秩序に致命的な打撃を与えた。新たな秩序の誕生は時間の問題だ。