ロサンゼルスのガソリンスタンドに長蛇の列ができた(1979年)
ロサンゼルスのガソリンスタンドに長蛇の列ができた(1979年) BETTMANN/GETTY IMAGES

揺らぐドル覇権

ドルの覇権も揺らいでいる。IMFなどによれば、地政学的ショックによる経済的打撃を緩和するドルの能力は低下している。各国が準備通貨の多様化を進め、金の保有量を増やすなかで、世界の外貨準備に占めるドルの割合は低下し続けている。

こうした「ドル離れ」はBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)を中心とするグローバルサウス諸国で顕著だ。こうした国々は自国通貨による2国間貿易の拡大や、中国の「人民元国際決済システム(CIPS)」の利用を増やそうとしている。実際、2月28日にイラン戦争が始まってからはCIPSの利用が急増している。

世界は一極的なドル支配から、分断され、ある意味で多極化した通貨体制に移行しつつある。イランはアメリカの覇権に対抗するため、原油取引の決済に人民元を使うよう、他国に強く働きかけている(なにしろ中国は世界最大の石油輸入国だ)。

インドもまた、ドルではなく人民元やUAEの通貨ディルハムでの決済を始めている。サウジアラビアなどの親米的な湾岸産油国でさえ(主としてアジア諸国への石油販売では)試験的にドル以外の通貨による決済を始めている。

こうなるとイスラエルの政治的・経済的立場も難しくなる。長年にわたる戦争が国内経済を圧迫しているし、湾岸諸国との関係改善に向けた取り組みは停滞している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はドナルド・トランプ米大統領の「平和評議会」構想に相乗りしてガザ地区を「経済特区」に変えたいようだが、実現へのハードルはあまりにも高い。

イラン戦争の勝者は?
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