「既存の足場」対「新たな市場」

ダイソンがシンガポールで既に一定の足場を築いていたことも、今回の決定の要因だっただろう。

同社はすでに、この地で1100人の従業員を抱え、年間2100万台のデジタル電気モーターを製造している。また、シンガポールと2つの橋でつながれたマレーシアや、フィリピンにも製造拠点を持つ。

「もちろん驚いたが、シンガポールは東南アジアの中心であり、近隣国から部品を供給させ、ここでハイテク車を組み立て、製造するのには最適だろう」と、アジアの多国籍企業と取引する銀行員は語った。

ダイソンは、ライバルのテスラのように、中国という世界最大の市場に工場を構える選択肢もあっただろう。

ダイソンが最初のEVを世に送り出す2021年には、テスラはすでに中国で国内製造した車の販売を始めているかもしれない。テスラは、86万平方メートルの土地に同社初の海外巨大工場「ギガファクトリー」を建設する契約を上海当局と結んでいる。

だが、中国市場はEV製造では混戦状態になりつつあり、中国政府も補助金の抑制に乗り出している。

一方のシンガポールは、中国と広範な自由貿易協定を結んでおり、関税削減の対象品目にはさまざまな種類の自動車や自動車部品が含まれている。シンガポール経済開発庁に、EVが関税免除対象に含まれるかを質問したが、現段階では回答がない。

ダイソンは、知的財産保護の問題も考慮に入れただろう、とJDパワーのマジュムダール氏は指摘。「シンガポールでは、知的財産が厳格に守られており、それは間違いなくアドバンテージだ。中国に行けば、その点では、それほど安心していられないだろう」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

John Geddie and Aradhana Aravindan

[シンガポール 24日 ロイター]

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