負のスパイラル

重要なのは、この炎症が「低レベルだが持続的」である点だ。急性感染症のような高熱は出ないので、本人は体の異変に気付きにくい。しかし免疫システムは常に戦闘態勢を強いられ、血管や臓器の「休めない状態」が続く。

歯周病と糖尿病の関係は、この慢性炎症の影響を端的に示している。歯周病による炎症は糖の代謝を調節するインスリンの働きを弱め、血糖コントロールを困難にする。

一方、高血糖状態が続くと免疫機能が低下し、歯周病が悪化しやすくなる。両者は一方通行ではなく、互いを悪化させる「負のスパイラル」を形成する。

この双方向性は、最新の研究でより明確になった。24年、大阪大学と東京医科歯科大学の研究グループがそれぞれ、糖尿病の集中治療で歯周病の炎症状態が改善することを報告。歯周病治療が血糖値を下げるだけでなく、糖尿病治療が歯周病を改善する「双方向の治療効果」が実証された。

さらに25年1月、東北大学は約10万人の糖尿病患者を追跡した大規模研究の結果を発表した。

歯周病治療のために定期的に歯科を受診している患者は、受診していない患者に比べて人工透析に移行するリスクが32~44%低いことが明らかになった。歯周病のケアが、糖尿病の重篤な合併症である腎症の進行を抑える可能性を示すエビデンスだ。

疾患リスクを下げる最も身近な予防医療
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