ナンパできない若者たち

一方、思春期の心の発達に関する世界的権威であるテンプル大学のローレンス・スタインバーグ教授の考えは違う。特定の時期に恋愛経験がないと、上手に恋愛をする能力は永遠に身に付かないという証拠はないというのだ。とはいえ、スタインバーグも、現在見られる現象を否定しているわけではない。

コロナ禍の後、スタインバーグはフィラデルフィア在住のバーテンダーが「最近の若者はバーでナンパする能力を失ってしまったようだ」とか、「隣に座った赤の他人と雑談を交わすことに気まずさを感じている」と評するのを聞いたと言う。「確かに、そういう部分もあるかもしれない」と、スタインバーグは言う。「みんな(人付き合いの)腕が鈍ってしまったのだ」

ニューヨークにインティマシー回復センターを創設したゲーリー・カッツ所長は、こうした現象を毎週のように目にしている。そして、テクノロジーは親密な感覚をさほど与えてくれないと指摘する。AIはリアルなつながりらしきものを感じさせてくれるが、長期的な関係を支える「ややこしい状況への耐性」をもたらしてはくれないというのだ。

カッツは自分の思春期を例に挙げて説明する。女の子をローラースケート場でのデートに誘ったものの、つまずいて2人して転倒したことや、中学2年生の時のガールフレンドが学校のダンスパーティーで別の男子生徒を好きになり、それを受け入れなければならなかったこと。AIが相手なら、こうした苦い経験はしないで済むが、転んでも立ち上がることを学ぶ機会は失われてしまう。

ジャントスは長年、この現象を幅広い文化で見てきたが、ロンドンのフォーカスグループはさらに具体的な変化を浮き彫りにしている。AIが対面関与の時間を奪うだけでなく、人間同士の最も親密な会話にも取って代わりつつあるという流れである。何より危険なのは、少なくとも親密さを示すことにおいては、AIのスキルが人間を上回るようになってきたことだ。

AIは人間よりも共感上手