Kentaro Okasaka
[大槌町(岩手県) 27日 ロイター] - 岩手県大槌町で暮らす芳賀諒太さんは、高校生のときに東日本大震災の津波で実家を流された。あれから15年、31歳になった芳賀さんは新たな災害に立ち向かっている。22日に発生し、国内最悪の規模に迫る山火事だ。「二度と大切なものを失わせたくない」。地元住民でつくる消防団の一員として、先輩団員たちとともに肩にホースを担ぎ、崖をよじ登って消火活動に奔走している。
「またか」。火災発生から4日目の26日、芳賀さんは岩手県大槌町・吉里吉里地区でロイターの取材に心境を語った。強い揺れと津波が東日本を襲った震災では同地区で約100人が亡くなり、芳賀さんも避難生活を余儀なくされた。「15年がたち、やっと生活が落ち着いてきたのに、これ以上財産を失うことがあってはならない。火災は広がり、私たちの疲労も限界に近づいているが、民家や家屋は絶対に死守するという気持ちだ」と強い決意を口にした。
現在は流された実家の跡地に家を建て、妻と1歳半の息子と暮らしている。背後の山からは白煙が立ち上る。数年前から消防団に所属しているが、これほど大規模な火災は初めての経験だ。「これまで出動したのは建物火災や林野火災で、現場に着けばすぐ消し止められたり、その日のうちに鎮圧できたり。でも今回のような状況は初めて」
2カ所で発生した大槌町の山火事は今も延焼を続け、27日までに約1600ヘクタールが焼失した。12都道府県と地元の計約1400人の消防隊員、さらに自衛隊のヘリコプターが消火活動に当たっている。
町内では出火のたびに消防車のサイレンが鳴り響き、住民らは不安な日々を過ごす。風にあおられて火は延焼を続け、26日には、芳賀さんらは炎が上がった山に急行した。「普段ならシカや獣類しか歩けないような斜面を、背中に放水用の水を背負い、滑りながら、這うように登っている。みんな夢の中でも消火活動をしているような状態だ」
地域では少子化が進み、芳賀さんの消防団も規定の定数を満たせていない。「あと数人でも団員がいてくれたら、守れる範囲も増えるのに」という思いも抱くという。就職や進学で故郷を離れる若者が多く、団員を確保していけるのかが不安だ。「50、60代になった自分がぜいぜいし(息を切らし)ながら山林火災の消火活動をするようでは、食い止められない」
それでも「自分たちが家々を守り抜くという思いで活動する姿を見て、次の世代の子供たちが消防団に入ろうと思ってくれないかな」と期待する。「短い間にいろいろな災害に見舞われてきた。でも、ここは本当に地域のつながりが非常に強く、団結力がある。消防団に限らず、地域住民一体となって地域を守るのが私たちの日常だ」
芳賀さんの本業は地元の役場の職員。故郷に残った芳賀さんにとって、地元の魅力は山、川、海がすぐ近くにそろっていることだという。山から川を通じて海へと栄養分が流れ込み、それが豊かな漁場を支えている。「早く日常を取り戻したい」との一心で、今日も消防車に乗り込む。
(岡坂健太郎、Tom Bateman 編集:久保信博)