ドイツ国内全体でも持ち家率は47.2%で、EUで最も低い水準の国の1つだった。ベルリンに至っては実に85%の住民が賃貸暮らしをしている。なぜベルリンっ子は賃貸にとどまり続けるのか。その主な理由は、賃貸でも高度な自由度があるからだ。
賃借人は通常、壁を取り払って部屋をつないだり、許可なく新しい窓やドアを作ることはできない。だが、日本では考えられないことがドイツでは普通に行われている。
例えば、新たに引っ越した賃借人は、照明器具が全くなく、キッチンもむき出しの状態(シンクやキャビネットなし)の部屋に入ることが多い。なので、みんな自分たちで好きなインテリアを購入し設置するのを楽しみにしている(引っ越す際には、それらの設備を次の住まいであるアパートに持って行く)。
日本と同様、契約書には「原状回復」が明記されている。しかしドイツでの解釈は異なる。日本で壁にくぎで穴を開けることは原状変更に当たり、修繕費を要求されるが、ドイツでは賃借人にくぎやフックを打って絵を掛ける権利がある。退去時にパテで埋めて塗装すれば、それで問題ない。
「習慣は土地柄による」。ひと工夫した生活をしたいなら、日本では住宅を買うべし。契約から決済までのわずかな間に、かろうじて法律相談でき、一応安心した。とはいえ課題は残る。再建築不可物件でないことを保証する書類は(どうやら)ない。売主が決済日に来ないと突然宣言した……これも怪しいではないか。そして何より、買主が初日に一人で初めてドアを開けるのは適切なのか。不動産業者も立ち会わないで?
支払いも無事終了。誰も立ち会わないまま、一人で扉を開ける。開いた! どうやら詐欺には遭わなかったようだ。あとはどの壁にどの絵を飾るかだ。
くぎを打つぞ!
トニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点にジャーナリスト、講師として活動。コミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)の主人公。