Libby George Andrea Shalal
[ワシントン 20日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会を終えた新興国の財務相や中央銀行総裁らは、米国とイスラエルのイラン攻撃に端を発した中東紛争によって経済の歯車が狂い、燃料や食品の価格高騰で国民生活が悪化し、債務問題や経済改革の取り組みが軌道を外れたことに、やりきれない思いだ。
IMFは2026年の新興国の経済成長率予測を前年比3.9%増とし、1月時点で予想した4.2%から引き下げた。中東紛争が長期化すれば、さらに悪化する恐れがある。
アルバレス・アンド・マーサルのソブリン・アドバイザリー・サービス部門の責任者レザ・バキル氏はロイターに対し、債務再編から補助金廃止に至るまでの痛みを伴う改革を進めてきた新興国は、自らが招いたものではない新たな危機によって財政収支が崩壊し、手探りの状態に追い込まれていると指摘。「気落ちするような状況だ。そして自国の責任ではない事態の進展により、深刻な経済危機に対処せざるを得なくなっている」との見解を示した。
その1例がナイジェリアだ。過去3年間に多額の燃料補助金を撤廃し、外国為替規制を緩和し、規制を合理化することで外国からの投資を呼び込んできたものの、ウェル・エドゥン財務相はロイターに「私たちはできる限りのことをしているが、外生的要因によるショックが次々と襲ってくる」と言及。その上で「そうした事態が私たちの成果や進歩を台無しにしてしまう」とため息をついた。
ケニア中央銀行のカマウ・トゥゲ総裁は、同国では経済が安定化してインフレを抑制し、利下げによる景気刺激効果が表れ始めたにもかかわらず、中東紛争のせいで金融緩和サイクルが中断に追い込まれ、あらゆる物価が押し上げられ、これまでの予測が不透明になって、「少しもどかしい」と打ち明けた。
しかし、IMFと世銀は具体的な解決策をほとんど提示しなかった。IMFのゲオルギエワ専務理事は12カ国以上が今回のショックを乗り切るための融資を求めているとし、中東紛争の期間次第だが、需要が200億ドルから500億ドルに上るとの見通しを示した。世銀は各国に最大で250億ドルの危機対応基金を用意しており、今後半年間に最大で600億ドルを利用できると説明した。
新興国からの切実な支援要請を受け、世銀のバンガ総裁は必要になれば年内に最大1000億ドルを供出できると訴えた。
一方でIMFと20カ国・地域(G20)はコロナ禍の際とは異なり、新たな支援策を提示することはなかった。
元ホワイトハウス高官で、現在はロックフェラー財団に所属するクリスティーナ・シーガルノウルズ氏は、世銀とIMFは事実上「心配しないでほしい、これまで通り対応できる」と表明したと分析。「しかし、依然として脆弱な状態の国々がある。これまでの手段では、こうした国々を持続可能な状態に戻すことはできていない」と問題視した。
その上で、悪循環を断ち切る何かが必要だとし、「そうでなければ次にショックが起きた時、また同じ状況に戻ってしまう」と警告。また、各国が「債務のわな」から脱却できるよう、長期の融資や大規模な資金調達、そして多様な資金調達形態が選択肢となり得るとの見方を示した。