<韓国から北朝鮮に向けてドローンを飛ばした大学院生を、軍や情報機関が支援していた。なぜ、李在明政権下でこの事件が起きたのか?>
「スカイウォーカー・タイタン2160」。今年1月、北朝鮮によって撃墜されたドローンの機種名だ。機体価格はオンラインショップで159ドル(約2万5000円)。10万円程度の追加部品を買って組み立てれば、ほぼ同機能のドローンが作れるというのが、韓国の専門家の見立てである。
機体を飛ばしたとされるのは30代の大学院生。学生は自ら韓国メディアに名乗り出て、撮影した画像を公開した。個人の行為であっても、南北間にある休戦ラインを越える航空機の無断運用は重大な休戦協定違反であり、取り締まりを怠った韓国政府に責任が生じる。
だが事件が複雑さを増したのはここからだった。この学生は保守的性向の強い政治活動をしてきたことで知られる人物であり、かつては保守系学生団体の全国組織の長も務めている。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権期には大統領報道官室の「モニタリング要員」として勤務し、昨年4月からは2つのオンラインメディアを立ち上げ、言論活動も行ってきたというから、プロの活動家だと言ってよい。
すぐに明らかになったのは、彼の活動に対する韓国軍と情報機関の金銭面を含む支援だった。ドローンの製作についても情報機関が支援を行い、得られた情報は軍内の諜報機関である情報司令部や特殊戦司令部に渡っていた、とされている。
李在明(イ・ジェミョン)大統領は当初から事件の徹底調査を命じ、概要が明らかになった4月6日には「遺憾の意」を表している。この李の発言に対して、北朝鮮側は、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が「率直で堂々とした姿勢だ」と評価したと報じた。対決姿勢を強めている北朝鮮による韓国大統領に対する好意的な報道は異例である。